解決編 4 国際社会の声 | Fight for Justice 日本軍「慰安婦」―忘却への抵抗・未来の責任

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解決編 | Fight for Justice 日本軍「慰安婦」―忘却への抵抗・未来の責任

 

4 国際社会の声

4-1 国連クマラスワミ報告

国連クマラスワミ報告とは

クマラスワミ報告書とは、1995年から2002年にかけて、ラディカ・クマラスワミ「女性に対する暴力、その原因と結果に関する特別報告者」が国連人権委員会に提出した数十本の報告書のことです。日本では、そのうち特に1996年の「日本軍性奴隷制に関する報告書」を指すのが一般的です。

 

クマラスワミ特別報告者は1994年の国連人権理事会で任命されました。クマラスワミ報告書は、1993年に国連総会で採択された「女性に対する暴力撤廃宣言」の定義に従って、家庭における女性に対する暴力、社会における女性に対する暴力、国家による女性に対する暴力の3つの分類を基にしています。日本軍性奴隷制に関する報告書は、国家による女性に対する暴力の重要事例の一つとして取り上げたものです。

 

4-1画像Ms-Radhika-Coomaraswamyクマラスワミ特別報告者はこんな人

クマラスワミ特別報告者はスリランカの女性弁護士で、スリランカ人権委員会委員長です。1993年のウィーン世界人権会議の決定によって、国連人権委員会に「女性に対する暴力特別報告者」を設置することになり、1994年の国連人権委員会の決定によってクマラスワミ特別報告者が任命されました。クマラスワミ報告者は、1995年から2002年まで女性に対する暴力の撤廃に向けて多くの報告書を国連人権委員会に提出しました。女性に対する暴力特別報告書の任務終了後、国連事務総長から委嘱されて「子どもと武力紛争特別代表」として活躍しています。

 

報告書の特徴

クマラスワミ特別報告者は、1995年7月にソウルと東京を訪問して、韓国政府及び日本政府から聞き取りを行い、資料の提供を受けました。平壌も訪問予定でしたが、期日が合わなかったため訪問できなかったので、人権センター代表が代理で訪問して調査しました。報告書はこれらの資料に基づいています。

 

クマラスワミ報告書は、「慰安婦」問題を「戦時、軍によって、または軍のために、性的サービスを与えることを強制された女性の事件を軍事的性奴隷制の慣行」と定義しています。第1に、国連人権委員会差別防止少数者保護小委員会で議論されてきた性奴隷制および奴隷類似慣行の概念が有益であること、第2に、「慰安婦」という言葉は被害実態を示すのに適切でないことから「軍事的性奴隷」という言葉の方が適切であるとしています。

 

クマラスワミ報告書は、16人の被害者から聞き取りを行っていますが、チョン・オクスン、ファン・ソギョン、ファン・クムジュ、ファン・ソギュンの証言を紹介しています。

 

クマラスワミ報告書は、自国の法的責任を否定する日本政府の立場を紹介・検討して、現代国際法の下では、重大人権侵害についての責任者の訴追や、被害者の賠償請求権が認められていることを明示しています。1907年のハーグ陸戦規則や、1929年のジュネーブ捕虜条約、そしてニュルンベルク東京裁判憲章などに照らして、当事の国際法の下でも日本政府に責任があったことを確認しました。

 

報告書の勧告

4-1画像3

クマラスワミ報告書は、最後に、日本政府と国際社会に対して勧告を出しています。日本政府に対する勧告は次の6項目です。

 

(a)第2次大戦中に日本帝国軍によって設置された慰安所制度が国際法の下でその義務に違反したことを承認し、かつその違反の法的責任を受諾すること。

(b)日本軍性奴隷制の被害者個々人に対し、人権および基本的自由の重大侵害被害者の原状回復、賠償および更生への権利に関する差別防止少数者保護小委員会の特別報告者によって示された原則に従って、賠償を支払うこと。多くの被害者がきわめて高齢なので、この目的のために特別の行政審査会を短期間内に設置すること。

(c)第2次大戦中の日本帝国軍の慰安所および他の関連する活動に関し、日本政府が所持するすべての文書および資料の完全な開示を確実なものにすること。

(d)名乗り出た女性で、日本軍性奴隷制の女性被害者であることが立証される女性個々人に対して書面による公式謝罪をなすこと。

(e)歴史的現実を反映するように教育カリキュラムを改めることによって、これらの問題についての意識を高めること。

(f)第2次大戦中に慰安所への募集および収容に関与した犯行者をできる限り特定し、かつ処罰すること。

 

報告書への批判

クマラスワミ報告書に対しては、国連人権委員会は報告書を留意したが、歓迎したのではないという指摘がなされました。また、 「事実誤認がある」との指摘もあります。

 

第1に、1996年の国連人権委員会53会期は盛大な拍手でクマラスワミ報告者を迎えました。そして、全会一致でクマラスワミ報告者の活動を「歓迎」し、報告書に「留意」したのです。全会一致ということは、日本政府も反対できなかったということです。国連人権委員会は、国連加盟国から選挙で選ばれた53カ国の政府によって構成されていて、当時、日本政府も人権委員の地位にありました。

 

4-1画像2

第2に、報告書には一部に事実誤認があることが指摘されています。確かに一部に誤認はあります。しかし、報告書全体の趣旨を損なうような大きなミスはありません。重要なことは、クマラスワミ特別報告者は、日本政府を含む国連人権委員会の決議によって特別報告者に任命され、日本政府の招待を受けて日本を訪問し、日本政府から情報提供を受けて、報告書を作成したという事実です。

 

日本政府が適切かつ十分な情報を提供したにもかかわらず十分な報告書にならなかったのならばクマラスワミ特別報告者を批判することができるでしょう。しかし、事実は逆です。もし、報告書に不備があったとすれば、十分な調査をしなかった日本政府、必要な情報公開をしなかった日本政府にその責任があるのです。

 

第3に、1996年の国連人権委員会で、日本政府が「怪文書」を配布したことを忘れてはなりません。クマラスワミ報告書の否決をめざした日本政府は、報告書に反論する文書を準備して、人権委員会事務局に提出し、一部の政府代表に配布しました。ところが、この反論文書は特別報告者を不当に中傷していると批判の声があがったため、日本政府は反論文書の撤回を余儀なくされました。日本政府はこの文書の存在を隠そうとしましたが、国連人権委員会会場で配布され、すでにコピーが出回っていて、多くの人権NGOがコピーを入手しました。その後、日本政府は「説明用の資料にすぎない」と釈明しました。国連人権委員会という国際舞台で日本政府が「怪文書」をばらまいたのは、それだけクマラスワミ報告書が痛手だったからでしょう。

 

報告書の意義

 

クマラスワミ報告書は、武力紛争時における女性に対する性暴力に対して、現代国際法がどのような対処を可能としているのか、また、どこに不備があるのかを示す重要な役割を果たしました。国際人権法と国際人道法を適用することで責任追及をなしうる場合と、現在の国際法では十分な対処ができない場合の限界について明確にしました。1996年当時は、国際刑事裁判所を設置するための国際交渉が行われていたさなかであり、旧ユーゴスラヴィア国際刑事法廷やルワンダ国際刑事法廷の活動も始まったばかりで、まだ判決が出ていませんでした。クマラスワミ報告書が示した武力紛争時における性暴力に対する訴追と処罰は、1998年以後に実現していくことになりました。

 

慰安婦」問題についても、当時の国際法の解釈によって日本政府の法的責任を解明できることが判明しました。クマラスワミ報告書の国際法の議論は、1998年のマクドゥーガル報告書や2000年の女性国際戦犯法廷に継承されました。

 

クマラスワミ報告書の勧告は人権NGO・市民運動に歓迎され、クマラスワミ6項目勧告として、被害者の請求を求める運動の出発点となりました。クマラスワミ報告書に反発した日本政府でさえ、法的責任は認めないものの、個人被害者に対する賠償に代わる措置、首相による「お詫び」の手紙、学校教育への反映など若干の措置を講じざるを得なくなりました(その後、逆転していきますが)。

<参考文献>

ラディカ・クマラスワミ著・クマラスワミ報告書研究会訳『女性に対する暴力――国連人権委員会特別報告書』明石書店、2000年

ラディカ・クマラスワミ著・VAWW-NETジャパン翻訳チーム訳 『女性に対する暴力をめぐる10年--国連人権委員会特別報告者クマラスワミ最終報告書』明石書店、2003年

4-2 国連マクドゥーガル報告

国連マクドゥーガル報告

マクドゥーガル報告とは、1998年8月および2000年8月の国連人権委員会差別防止少数者保護小委員会に、ゲイ・マクドゥーガル「組織的強かん、性奴隷制および奴隷制類似慣行に関する特別報告者」が提出した2つの報告書のことです。1998年報告書の付録は日本軍性奴隷制(「慰安婦」問題)を主題として取り上げ、国際法に基づく詳細な分析をもとに日本政府に対する勧告を呈示しています。2000年報告書においても、日本軍性奴隷制に1章を割いて被害者への法的賠償と責任者の訴追を勧告しています。

 

マクドゥーガル特別報告者はこんな人

4-2 画像マク

マクドゥーガル特別報告者はアメリカ人女性ですが、かつて南アフリカ共和国における人種隔離政策のアパルトヘイトに反対し、差別反対、人権擁護の活動を長期にわたって続けたことで有名です。

 

1996年に国連人権委員会の差別防止少数者保護小委員会副委員となり、組織的強かん特別報告者に任命されました。また、国連人種差別撤廃委員会委員にも選ばれました。国連人権理事会発足後は、「マイノリティに関する独立専門家」に任命され、世界のマイノリティの状況を明らかにして、マイノリティに対する差別をなくすための国連会議「マイノリティ・フォーラム」を主催して、人権理事会にたくさんの報告書を提出してきました。今日、世界でもっとも著名で信頼される人権理論家・活動家の一人で、ジョージタウン大学客員教授に迎えられました。

 

報告書の特徴

マクドゥーガル報告書は、「慰安婦」問題について日本政府が認めた事実および国際機関(国際法律家委員会、国連人権委員会女性に対する暴力特別報告書)が確認した事実を基にして議論をしていますが、「慰安婦」とか「慰安所」という言葉は事実をゆがめるものなので、日本軍性奴隷と強かん所(レイプ・センター)と表現するべきだと指摘しています。

 

報告書は、日本政府が認めた事実について、国際人道法および国際人権法に基づいて分析しています。奴隷制の禁止、人道に対する罪、戦争犯罪としての強かんなどの犯罪が成立する可能性があることを明らかにしたうえで、日本政府による抗弁が成立しないことも示しています。

 

1-8 書映1マク報告書の勧告

マクドゥーガル報告書は、日本政府や国連人権高等弁務官に対して次のような勧告をまとめています。

刑事訴追を保証するための仕組みの必要性

・強かん所を設置・運営した軍人らに関する証拠を集める。

・被害者の面接調査を行う。

・日本の検察官に対し提訴準備を促す。

・諸外国の裁判における訴追の協力を行う。

・そのための立法措置を取るよう各国に援助する。

損害賠償を実現するための法的枠組みの必要性――日本政府が行った「アジア女性基金」は法的賠償にあたらないので、新たに損害賠償のための行政基金を設置すべきだとしています。

・従前の事例を参照して適切な損害賠償額を算出する。

・基金の広報と被害者認定のため、効果的なシステムを確立する。

・被害者の請求に対処するため、行政審査機関を日本に設置する。

損害賠償額の妥当性――身体的、精神的な被害、苦痛や情緒不安定、教育などの機会の喪失、収入そのものや収入を得る能力の喪失、リハビリテーションのための医療費その他の応分な費用、名誉または尊厳への侵害、救済を得るために法律家や専門家の援助にかかる応分の費用などを考慮すべきだとしています。

報告義務――日本政府は少なくとも年2回、国連事務総長宛てに報告書を提出すべきだとしています。

 

報告書への批判

日本政府は、マクドゥーガル報告書が公表される以前から敵意をむき出しにして反対し、その後も勧告を拒否したままです。

 

マクドゥーガル報告書に対して、事実誤認があるという批判がなされることがあります。しかし、この報告書はそれまでに日本政府や国際機関が認めた事実を基にしているのであって、新たに事実認定をしたものではありません。また、註において荒船清十郎の言葉を引用していますが、荒船発言が歴史的事実であると確認できないという批判がなされます。しかし、仮に荒船・自民党議員が不正確な発言をしたのであれば、荒船を批判して、正確な事実を示すべきです。マクドゥーガル報告書を批判する理由にはなりません。

 

報告書の意義

マクドゥーガル報告書の意義は、国際人道法と国際人権法に基づいた法的分析を大きく前進させたことです。国際法律家委員会や、ラディカ・クマラスワミ国連人権委員会女性に対する暴力特別報告者が行ってきた国際法の分析をさらに一歩前進させたのです。それゆえ、マクドゥーガル報告書はその後の国際的議論に大きな影響を与えました。

 

というのも、マクドゥーガル報告書が公表された1998年8月時点では、参照できる主要な先例はニュルンベルク東京裁判判例くらいのものでした。武力紛争時における性暴力を裁く実践は、マクドゥーガル報告書公表以後に、1998年9月のルワンダ国際刑事法廷のアカイェス事件判決が、戦時性暴力をジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪として裁いて以後のことになります。

 

日本軍性奴隷制問題に関しては、2000年の女性国際戦犯法廷のための法理論の基礎となりました。世界における武力紛争下の女性に対する性暴力問題をめぐる国際的議論を発展させる最重要文書となりました。また2007年EU議会の「慰安婦」謝罪・補償要求決議にも影響を与えました。

 

<参考文献>

ゲイ・マクドゥーガル著・VAWW-NET ジャパン訳『戦時・性暴力をどう裁くか―国連マクドゥーガル報告全訳〈増補新装2000年版〉』凱風社、2000年

4-3 女性国際戦犯法廷と最終判決文

P24 

女性国際戦犯法廷とは

1-8 書映2法廷2000年12月、東京・九段会館で「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」が、被害女性六四人を招いて開廷されました。3日間の法廷の審理では、首席検事の共通起訴状の朗読、各国ごとの検事団の審理、被害者本人・ビデオによる証言、証拠展示、裁判官質問が行われ、その合間に専門家証人、日本軍元兵士(金子安次・鈴木良雄さん)証言が盛り込まれました。招請を無視した日本政府の見解は、アミカス・キュリエ(法廷助言者)が陳述しました。

 

東ティモール法廷には膨大な証拠(書証と人証)が提出されましたが、法廷当日に、各国の被害者が貴重な証言(ビデオ証言含む)しました。証言をしたのは、朴永心、河床淑、金英淑、文必、金福童、安法順(以上、南北コリア)、万愛花、袁竹林、楊明貞(中国)、トマサ・サリノグ、マキシマ・デラ・クルス、エステル・デラ・クルス・バリンギット、レオノラ・ヘルナンンデス・スマワンほか(フィリピン)、盧満妹、イアン・アパイ、高寶珠(台湾)、ロザリン・ソウ(マレーシア)、エリー・ヴァン・デル・プローグ、ヤン・ラフ=オハーン(オランダ)、マルディエム、スハナ(インドネシア)、エスメラルダ・ボエ、マルタ・アブ・ベレ、エルメネジルド・ベロ(東ティモール)でした。

また、日本軍元兵士として金子安次・鈴木良雄さんが証言をしました。

 

法廷専門家証言としては、山田朗明治大学教授)が「天皇の戦争責任」を、林博史関東学院大学教授)が「日本軍の構造」を、吉見義明(中央大学教授)が「慰安婦制度」に関する証言と証拠展示を行い、天皇の戦争責任や「慰安婦」制度への軍及び天皇の関与に関する立証に貢献しました。

 

またレパ・ムラジェノヴィッチ(ベオグラード・暴力反対自立センター)がトラウマ・PTSDを、フリッツ・カールスホーベン(オランダ・ライデン大学名誉教授)は「国家責任」を、藤目ゆき(大阪外国語大学助教授)が「日本人『慰安婦』」について、証言しました。

 

国際法で名高い検事団・判事団

首席検事団は、パトリシア・ビサー・セラーズ(旧ユーゴスラビア国際刑事法廷法律顧問)、ウスティニア・ドルゴポル(豪フリンダース大学国際法助教授)がつとめました。

 

判事団(裁判官)には、ガブリエル・カーク・マクドナルド(旧ユーゴスラビア国際刑事法廷前所長)やクリスチーヌ・チンキン(ロンドン大学国際法教授)、カルメン・マリア・アルヒバイ(国際女性法律家連盟会長)、ウィリー・ムテゥンガ(ケニア人権委員会委員長)など国際法の名高い専門家が加わりました。

 

そのうえで、法廷の判事団は、犯罪が行われた当時の国際法に拠って、「昭和天皇の有罪」「日本政府に国家責任」という「認定の概要」を示しました。

 

 

最終判決文が下した有罪判決—「慰安婦」制度は「人道に対する罪」

法廷の証言者—被害女性・元兵士・専門家約1年を経て翌年12月4日に、オランダ・ハーグで下された最終判決文では、「慰安所」制度に対する詳しい事実認定と法的分析を行い、「日本軍と政府当局は第二次大戦中に、『慰安婦』制度の一環として日本軍への性的隷属を強要された数万人の女性と少女に対して、人道に対する罪としての強かんと性奴隷制を実行した」(666項)と有罪を認定しました。

 

「性奴隷制」こそが適切な用語

最終判決文は、「慰安婦」制度を「制度化された強かん、すなわち性奴隷制」(583項)としました。「性奴隷制」は、歴史的に「強制売春」と呼ばれていた犯罪名を改める、より適切な用語であると付言しています。「強制売春は性奴隷制と本質的に同じ行為を伴うにもかかわらず、同程度に悪質な行為であることを伝える言葉ではない」として、「強制売春」はこの制度を利用する側の男性の見方ですが、「性奴隷制」は被害者の立場から、「被害者の受ける従属と苦悩をより適切に捉えている」(636項)としています。

 

また「一部の「慰安婦」が日本軍から支払いを受けていたとしても、性行為を拒否する自由な意志が奪われていた以上は、彼女たちの状態は性奴隷制であった」(656~660項)と的確に指摘しています。

 

被害者の救済を求める権利は国家間条約で消滅できない

さらに最終判決文は、被害者個人への補償は「国家間条約で解決済み」の根拠とされるサンフランシスコ平和条約(1951年)に対して、次のような判断を示しました。

 

「ある国家が他の国家の人道に対する罪の責任を放棄することはありえない。…サンフランシスコ平和条約に含まれる放棄条項は、連合国も、同条約の条件を何らかの形で受け入れた被害諸国も、人道に対する罪...に対する日本の責任を放棄するような法的能力や権利を有しなかったという理由で、無効である。」(1036項)

即ち、「人道に対する罪」の被害者が救済を求める権利は、国家間条約で消滅することはできないとしています。また判決は、平和条約締結時にジェンダー偏見が内在するとした首席検事の主張に説得力を認め、次の指摘をしました。

 

「我々は、女性が、個人・集団として、平和条約締結時に男性と同等の発言権や地位を有しておらず、その直接の結果として、軍性奴隷制と強かんの問題は、当時取り上げられずに終わり、平和条約の交渉や締結の背景とはならなかったことに注目する。本法廷は、国際的和平プロセスでこのようにジェンダーが無視されることは、武力紛争下の女性に対する犯罪の不処罰の文化を継続させることになると考える。」(1051項)

 

日本政府への勧告

4-3 画像wam法廷カタログ

最終判決文は、日本政府に対して、次のような勧告をしました(1086項)。

(旧連合国、国連及び加盟国への勧告もありますが、略します)

 

1.「慰安婦」制度の設立に責任と義務があること、この制度が国際法に違反するものであることを全面的に認めること。

2.法的責任をとり、二度と繰り返さないと保証し、完全で誠実な謝罪を行うこと。

3.ここで宣言された違反の結果として、犠牲者、サバイバーおよび回復を受ける権利がある者に対し、政府として、被害を救済し将来の再発を防ぐのに適切な金額の、損害賠償を行うこと。

4.軍性奴隷制について徹底的な調査を実施する機構を設立し、資料を公開し、歴史に残すことを可能にすること。

5.サバイバーたちと協議の上で、戦時中、過渡期、占領期および植民地時代に犯されたジェンダーに関わる犯罪の歴史的記録を作成する「真実和解委員会」の設立を検討すること。

6.記憶にとどめ、「二度と繰り返さない」と約束するために、記念館、博物館、図書館を設立することで、犠牲者とサバイバーたちを認知し、名誉を称えること。

7.あらゆるレベルでの教科書に意味のある記述を行い、また、研究者および執筆者に助成するなど、公式、非公式の教育施策を行うこと。違反行為や将来の世代を教育する努力が行われること。犯罪の原因、犯罪を無視する社会、再発を防止するための手段などを調査する努力をすること。

8.軍隊とジェンダー不平等との関係について、また、性の平等と地域のすべての人々の尊重を実現するための必要条件について、教育を支援すること。

9.帰国を望むサバイバーを帰国させること。

10.政府が所有する「慰安所」に関するあらゆる文書とその他の資料を公開すること。

11.「慰安所」の設置とそのための徴集に関与した主要な実行行為者をつきとめ、処罰すること。

12.家族や近親者から要望があれば、亡くなった犠牲者の遺骨を探して返還すること。

 

<引用・参考文献>

VAWW-NET ジャパン編・『女性国際戦犯法廷の全記録Ⅰ 日本軍性奴隷制を裁く2000年女性国際戦犯法廷の記録第5巻』緑風出版、2002年

VAWW-NET ジャパン編『女性国際戦犯法廷の全記録Ⅱ 日本軍性奴隷制を裁く2000年女性国際戦犯法廷の記録第6巻』緑風出版、2002年。

VAWW-NET ジャパン編『Q&A 女性国際戦犯法廷—「慰安婦」制度をどう裁いたか』明石書店、2002年

アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」編『女性国際戦犯法廷のすべて』wam catalogue、2006年

4-4 2007年アメリカ下院など対日「慰安婦」謝罪要求決議

日系ホンダ議員が提出した決議案

4-4画像1 HONDA2007年1月31日、日本政府に対して「慰安婦」問題について責任の認定を求める決議案(United States House of Representatives proposed House Resolution 121, H.Res.121)が、日系のマイク・ホンダ議員を含む7名の議員(民主党4人・共和党3人)によって、アメリカ下院外交委員会に提出されました。

 

2月15日に開かれた公聴会では、3人の「慰安婦」被害者が証言しました。米議会がこの問題で被害者の生の証言を聴くのははじめてのことでした。米国内でも決議案を支持する動きが高まりました。

http://www.youtube.com/watch?v=3GkS3ViToGA
http://www.youtube.com/watch?v=D6oTTgnaRII

 

その後、次々と賛同する議員が増えていき、共同提案者は民主党・共和党で167人にのぼり、7月30日に下院本会議で満場一致で採択(⇒資料庫に英語版・翻訳)されました。同様の決議案は01年から4回提出され、いずれも廃案になっています。

 

これに続き、同年11月にはオランダ下院本会議、カナダ下院、12月にはEU議会本会議でも同様の「慰安婦」謝罪要求決議の採択へと拡がりました(オランダは被害当事国です)。また2008年には被害国である韓国国会、台湾立法院でも同様の決議があがりました。

 

なぜ2007年なのか

では、なぜ2007年に、アメリカ、オランダ、カナダ、EUへと決議が広がったのでしょうか。アメリカ下院本会議決議の場合をみてみましょう。

 

第一に、前年の2006年4月から使われる日本の中学歴史教科書の本文から、「慰安婦」についての記述がいっせいに消え、日本の政治家が「慰安婦」の事実関係を否定する発言を繰り返したことです。

 

それまで「河野談話」「村山談話」に基づき、1997年の中学歴史教科書7社全社に「慰安婦」に関する記述がはじめて登場しました。これに反発する勢力が巻き返しをはかり、2002年度教科書では8社中3社だけの記述になり、2006年度教科書では本文中からすべて消えました。これに関して、2004年に、中山成彬文部科学大臣(当時)が「最近、いわゆる従軍「慰安婦」とか強制連行とかいった言葉が減ってきたのは本当によかった」と発言しました。

 

このことに安倍氏は重要な役割を果たしてきました。安倍氏は、国会議員であった時から「慰安婦」の存在に否定的な「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(1997年結成)の事務局長として、日本軍の関与を政府が認めた「河野談話」(1993年)の修正・撤回を求める活動をしてきました。

 

こうした動きに対して、アメリカ下院決議では

「日本の学校で使用されている新しい教科書には「慰安婦」の悲劇やその他第二次世界大戦中の日本の戦争犯罪を軽視しようとするものがあり、」 「日本の公人私人が最近になって、「慰安婦」の苦労に対し日本政府の真摯なお詫びと反省を表明した1993年の河野洋平内閣官房長官の「慰安婦」に関する声明(注:河野談話のこと)を、弱めあるいは撤回する欲求を表明しており、」

と、はっきりと懸念を示しています。ほかの国の決議案でも同様です。

 

安倍、ブッシュ_s

2007年4月27日の日米首脳会談で、安倍首相は元「慰安婦」の方々に「申し訳ない」と述べ、ブッシュ大統領は「謝罪」を受け入れた。ところが、2013年3月に国会で安倍首相はこの会談で「慰安婦」問題は出ていないと否定したが、同年5月に辻元清美議員に矛盾を追及されると、一転して以上の事実関係を認めた。

第二に、2006年9月に首相になった安倍晋三氏が、2007年3月には自ら「慰安婦」への強制性を否定する発言をしたことです。しかもその発言がアメリカの世論から批判されると、日米首脳会談で「謝罪」を口にするなど、一貫せず迷走しました。

 

安倍首相は、組閣直後には「河野談話を引き継ぐ」(06年10月3日)と表明しましたが、訪米を前にした3月に「河野談話」に関連して「定義されていた強制性を裏づけるものはなかった」(07年3月1日)と語り、さらに政府答弁書で「政府が発見した資料のなかには、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」(3月16日、2007年閣議決定)と強制性を否認しました。3月5日には、米下院決議案に対して、「われわれが謝罪するということはない」とまで表明しました。

 

これらの発言が米国内で報道され大きな反発をよぶと、これに慌てた首相は、ニューズウイーク-ワシントンポストの記者の質問に「(従軍慰安婦にされた人々に)人間として、私は同情を表明したいし、また日本の首相としてこの人たちに謝罪する必要があります」と応え、軌道修正をはかりました(4月21日)。しかし記者に「これまでの発言と違う、あなたは(強制性の)証拠はないと言っていた」と指摘されると、「そのようなことをいったのは私が最初ではない」と逃げの答弁をしました。その直後の日米首脳会談で、安倍首相はブッシュ大統領に対して(元「慰安婦」への)「謝罪」を口にしました。

 

その後6月14日には、日本の国会議員などがワシントンポストに『The Facts』と題する広告をだし、「慰安婦」の強制性を否定し、「慰安婦」の徴集に日本の政府も軍も関与していないと主張しました。これに対して、被害国であるオランダのバルケネンデ首相は「あまりにも不適切だ」として不快感を表明しました (共同通信6月29日付)。

 

この過程で、決議に賛同する米国会議員がどんどん増えていきました。その理由について分析した荒井信一は、「3月および訪米時の首相の言動が、決議案への賛同議員増加の決定的要因」と述べています。

 

国際社会は何をなぜ問題にしているのか

アメリカ下院決議などの各国決議は、「慰安婦」問題への日本政府の対応に対して、国際社会が何をなぜ問題にしているのかを突きつけました。それをみていきましょう。

 

第一に、各国の決議はいずれも、以下のように、「慰安婦」問題の核心は日本軍による慰安所での性行為の強制、つまり性奴隷であったことにあると認識していることです。

「日本軍への性的隷属」「集団強かん、強制中絶、屈従、そして身体切除、死、結果的自殺に至った性暴力を含む、20世紀でも最大の人身取引事件の一つ」「性奴隷制を強制」(アメリカ決議)、
「日本が、…運営した強制性奴隷制度」(オランダ決議)、
「日本帝国軍のための「慰安婦」の性奴隷化や人身取引」(カナダ決議)、
「帝国軍の性奴隷」「輪姦、強制堕胎、屈辱及び性暴力を含み、障害、死や自殺を結果し、20世紀の人身売買の最も大きなケースのひとつ」「皇軍による若い女性を強制的に性奴隷状態においた行為」(EU決議)

と定義しています。このように、日本政府首脳や政治家のように、「慰安婦」を強制連行したかどうかを問題にしている決議は一つもありません。このことに対して、2007年当時アメリカにいた東郷和彦・前外務官僚は、「強制連行」に関する日本の議論は、この問題の本質にとって無意味であり、世界の大勢は誰も関心をもっていない、と言明しています。

 

慰安婦」問題の核心は、日本軍の管理・統制下で外出・拒否・廃業の自由(人権)が奪われた状態で、慰安所での性奴隷であった事実、悲惨な状態にあった事実にあるのですから、慰安所にたどり着く前の連行の形態———たとえば「慰安婦」が強制連行であったのか否か―—は、問題になりません(実際は強制連行の事例は多かったのですが)。したがって、前歴で売春をしたか否かも、報酬をもらったかどうかも(実際は報酬がない場合が多かったのですが)、売春だったか否かも、問題の核心とは無関係なのです(「強制売春」への見方は⇒女性国際戦犯法廷へGO)。

 

慰安婦」にされた女性たちは、日本の戦争遂行の道具にさせられ、人権を奪われました。問われているのは、日本社会、日本の政治家の「女性の人権」に対する意識です。

 

第二に、決議は、日本政府高官などの「慰安婦」否定発言や教科書からの「慰安婦」記述の抹殺に憂慮を表明し、「性奴隷制を強制」したことを「明確かつ曖昧さのない形で正式に認め、謝罪し、歴史的責任を受け入れるべき」(アメリカ決議)と明確に事実を認定し、「現在および未来の世代に対して」歴史教育を通じて伝えることを求めています。

 

そのうえで、教科書への記述や「慰安婦」の存在を否定する歴史修正主義に「明確かつ公的に反駁すべき」(アメリカ決議)と求めています。ほかの各国決議でも同様です。

 

第三に、とりわけEU決議は、日本政府に対して、謝罪だけでなく、賠償をするよう求めています。具体的には、被害者及び遺族への「賠償を行うための効果的な行政機構」、国会に対しては「賠償を獲得するための法的措置」を設置することを求めています。

 

一方、国民基金に対しては、「民間人の努力と情熱」(アメリカ決議)として認めていますが、「被害者たちが求めている法的な認知と公的な国際法による賠償を満たすものではない」(EU決議)とされ、日本国の正式な謝罪・補償とは見なしていません。

 

国際社会が懸念しているのは、日本軍「慰安婦」(性奴隷)制度という歴史事実を公然と否定する現在の日本が「民主主義、法の支配、人権の尊重などの価値」(EU決議)を共有しているのか、ということではないでしょうか。

 

<引用・参考文献>

荒井信一「米議会下院と『慰安婦』問題」『歴史と責任』青弓社、2008年
東郷和彦「『普遍的人権』問題としての慰安婦制度」『世界』2012年12月

4-5 国連人権理事会普遍的定期審査(UPR)

Human Rights Council

国連人権理事会(United Nations Human Rights Council , 略称UNHRC)は、2006年の創設以来毎年、すべての国連加盟国の人権状況を順次審査する普遍的定期審査(Universal Periodic Review, 略称UPR)制度を採用しました。日本政府も、2008年と2012年に審査対象となりました。日本の人権状況に関して諸外国から様々な是正勧告が出されています。日本軍性奴隷制に関しても勧告が出されています。

 

第1回審査(2008年)

ジュネーヴ国連欧州本部で開催された国連人権理事会は、2008年5月9日、普遍的定期審査作業部会において日本の人権状況について審査を行いました。全部で26項目の勧告が出されましたが、日本軍性奴隷制に関する勧告は次の通りです。

 

「5 第2次世界大戦中の『慰安婦』問題に関する、国連諸機関(女性に対する暴力に関する特別報告者、女性差別撤廃委員会および拷問禁止委員会)による勧告に誠実に対応すること(韓国)。」

「10 日本における継続的な歴史の歪曲の状況に取り組む緊急措置をとること。これは、過去の人権侵害および再発の危険性に取り組むことを拒否している現れであるためである。また、現代的形態の人種主義に関する特別報告者からも呼びかけられたように、この状況に取り組む緊急措置を勧告する(朝鮮民主主義人民共和国)。」

「18 軍隊性奴隷問題、および朝鮮を含む諸国で過去に犯した人権侵害に取り組むため、具体的な措置を講じること(朝鮮民主主義人民共和国)。」

 

普遍的定期審査制度が始まって間もないため、各国とも手探り状態でした。そのためか日本政府に対する勧告は26項目です。他の諸国に対する勧告と比較して特に差があったわけではありませんが、後の2回目の審査では大幅に増えたのと比較すると、少なかったと言えます。その中で、「慰安婦」問題については当事者である韓国と朝鮮の2カ国が勧告を出しました。普遍的定期審査の勧告は、単に韓国と朝鮮がそう主張したというだけではなく、審議を経た後に作成される人権理事会普遍的定期審査報告書に記載され、正式文書として人権理事会で採択されました。

 

第2回審査(2012年)

ジュネーヴ国連欧州本部で開催された国連人権理事会は、2012年10月31日、日本に関する2回目の普遍的定期審査結果を作業部会報告書としてまとめ、174項目の勧告を含む報告書を採択しました。

日本軍性奴隷制に関する勧告は、次の通りです。

 

「いわゆる『慰安婦』問題について法的責任を認め、関連する国際共同体によって勧告されたように、被害者が受け入れることのできる適切な措置を講じよ(韓国)」

「過去と現在に向き合い、国際共同体に責任ある調和をとるよう再考し、慰安婦問題に関する謝罪を行い、その被害者に補償をせよ(中国)」

「第2次大戦中に用いられた『慰安婦』問題の責任を認め、被害者の尊厳を回復し、適切に補償する措置を講じよ(コスタリカ)」

「日本軍性奴隷制及び朝鮮を含むアジア諸国における過去に行ったその他の侵害について法的責任を受け入れ、きっぱりと対処せよ(朝鮮民主主義人民共和国)」

 

さらに、歴史教科書問題に関連して、次の勧告がなされました。

 

「学校教科書に慰安婦問題を盛り込むなどの措置を取ることによって、歴史の全側面を将来の世代に伝達し続けよ(オランダ)」

「教育課程に過去の犯罪と虐殺を含む歴史の事実を反映させることによって、過去の歴史の歪曲を終わらせ、歴史の事実への関心を高めよ(朝鮮民主主義人民共和国)」

 

2008年の第1回審査では、26だった勧告が174と大幅に増えました。普遍的定期審査が2順目となり、各国とも精力的に審査に加わるようになったことと、人権NGOの活動が活発となったためと思われます。

 

このため限られた時間の中で非常に多くの人権問題が語られ、「慰安婦」問題が霞んでしまうのではないかと危惧されましたが、第1回審査で勧告を出した韓国と朝鮮の2カ国に、中国、オランダ、コスタリカが加わり、5カ国になりました。中国、オランダも「慰安所」被害者のいる当事国ですが、コスタリカは関係当事国ではありません。日本軍性奴隷制度に関する法的責任を否定する日本政府の主張に、国際的な支持が得られないことがますます明白になりました。

 

普遍的定期審査とは何か

人権理事会は、2006年3月に国連総会で採択された「人権理事会」決議により、国連総会の下部機関として設置されました。国連における人権主流化の流れの中で、人権問題への対処能力を強化するため、従来の人権委員会に替えて新たに設置されました。ジュネーブにある国連欧州本部で開催されます。

 

人権理事会は47ヶ国で構成されます。地域的配分は、アジア13、アフリカ13、ラテンアメリカ8、東欧6、西欧7となっています。2006年6月の第1回会合以来、理事会会合(通常会合と特別会合)や各種の作業部会(ワーキング・グループ)等を開催し、テーマ別及び国別の人権状況にかかる報告や審議を行ってきました。

 

普遍的定期審査という制度が採用され、国連加盟国各国は4年に1回、人権状況を審査されます。理事国は任期中に優先的に審査されます。審査基準は、国連憲章世界人権宣言、当該国が締結している人権条約、自発的誓約、適用されうる人権法です。

 

審査は、次の3文書に基づいて行われます。

 

①被審査国は、「ガイドライン」に基づいて20頁以内の報告書を作成し、人権高等弁務官事務所に提出します。

②人権高等弁務官事務所は、被審査国に関する条約機関及び特別手続による報告並びに関連する国連公用文書を編集した文書を準備します。

③人権高等弁務官事務所は、NGO等関係者が同事務所に提出した信憑性と信頼性のある情報を要約した文書を準備します。

 

審査結果文書は人権理事会本会合で採択されます。結果文書は、勧告や結論と被審査国の自発的誓約から構成されます。

 

書映 戸塚悦朗普遍的定期審査と勧告の意義

慰安婦」問題について国際法の下で日本政府に責任があることは、1996年のクマラスワミ報告書、1998年のマクドゥーガル報告書、2000年の女性国際戦犯法廷判決(2001年最終判決)によって明らかになっていましたが、日本政府はその後も、法的責任を認めず、今日に至っています。この間、韓国、朝鮮、中国などの関係当事国が日本政府の法的責任を根拠に被害者への賠償等を求めてきました。また、アメリカ議会、EU議会なども日本政府に解決を求めてきました。ILOの条約適用委員会も日本政府に解決を求めています。そして、国連人権理事会も日本政府に解決を求めています。日本政府の国際法解釈はあまりに特異なもので、国際社会に通用しないことが明白です。

 

<参考文献>

戸塚悦朗国連人権理事会――その創造と展開』日本評論社、2009年

Universal Periodic Review HP