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われわれは今日、マクドナルドを占拠する

 

 

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「アルバ生」という単語はもはや現実にはそぐわない。今は、食べていくためにアルバを選ぶ労働者が増えている。具ギョヒョン氏は、2013年7月から「アルバ労働者」の権利を守るアルバ労組の委員長を務めてきた。先月29日、ソウル麻浦区老姑山洞のアルバ労組事務所で。


 우리는 오늘 맥도날드를 점거한다 : 네이버 뉴스

 

ハンギョレ新聞 2015.2.6

 

李ジンスンのヨルリム  アルバ労組委員長 具ギョヒョン

 

 

「アルバ」とは、韓国人だけが使う韓国語だ。ドイツ語の「アルバイト」(Arbeit、労働)を語源とするが、ドイツで何と使われているかは関係なく、1970~80年代の韓国社会で「アルバイト」は、青年文化の一片だった。当時、その言葉には「誠実な高校生の夢」や「世間と直接ぶつかってみようとする若者の覇気」といった叙情が込められていた。国立国語院は、外来語の「アルバイト」を「副業」と純化して書くように勧奨した。

 

 90年代のIMFを経て、アルバイトのロマンは強化され、アルバは副業ではない生業となった。10代の青年から60代の壮年層までが飛び込むようになった、資本主義の食物連鎖の最末端にある時間制労働。今やアルバは、過去のアルバイトの略語ではなく、2000年代以後に新たな意味を付与された新造語だ。「アルバ天国」が1万7774人を対象に調査したところによると、アルバ従事者は1週間に平均22.5時間働き、1カ月に平均63万6000ウォン(訳者注:約6万7300円)を受け取る。法定最低賃金ももらえないアルバはざらで、労働契約書を書かずに働いているケースも大半だ。すべて労働法違反だが、放置されている。

 

 労働圏の底辺にあるアルバたちの権利のために、2013年7月にアルバ労組が設立された。アルバ労組は、最低賃金を生活賃金の水準に上げろと「時給1万ウォン」運動を繰り広げる一方、アルバ労働相談、不当慣行の是正要求など、多様な活動を展開してきた。昨年末には、ファッション労組、青少年ユニオンとともに、「青年搾取大賞」にデザイナーの李サンボンを選出して、デザイン業界の痼疾的な賃金搾取慣行を告発し、返す刀で、デザイナーにモデルのようなスタイルばかりを要求する身体差別的な求人広告の実態を集め、国家人権委員会に陳情書を提出した。組合員360人余りの規模の新生労組だが、その活動は、才気溌剌で猪突的だ。

 

 アルバ労組を率いている人たちと会いたかった。新村ロータリーの裏路地に位置する労組事務所は、想像していたよりもきれいだった。平和キャンプソウル支部、青年左派、青年緑色ネットワークなどの団体と共同賃借している事務所の2坪ほどのパテーション空間に、7人の常勤者が勤務している。アルバ労組の労苦が刻まれた黄色いチョッキを着た長身の男性がつかつかと近づいて来て、挨拶をした。具ギョヒョン委員長(39才)だった。

   

10代から60代までのアルバ人生連帯記

   

-いろいろな事業を展開しているが、財政はどうやって充当しているのか。

 

具:組合員が毎月、最低賃金分の組合費を払う。今年(最低賃金は)5580ウォンだから、毎月、それぐらい。

 

-それで運営費がペイできるのか。常勤者の月給は。

 

具:組合費だけでは運営ができないが、「アルバ連帯」という後援団体を通じて、会社員や労務士、学校の先生…たいへん多様な人々が後援してくれている。それで活動家たちに最低賃金水準で人件費を払えている状態だ。

 

-青年ユニオンも労働組合だが、アルバ労組とはどのような関係なのか。

 

具:互いに緊密に協力している。青年ユニオンは青年世代に焦点を当てており、アルバだけではなく、インターン、契約職、一時的な失業者など、青年労働者全般の問題を扱う。これに比べて私たちは、アルバ労働者の問題を扱っており、青少年と青年層が多いことは多いが、中年、壮年まで世代が広がっている。

 

-アルバは、学生や就職準備生がしばらくやって止めていく仕事だと考える人が多い。それで、アルバ労働者と言わずにまとめて「アルバ生」と呼んでいるが、実際にアルバで働く人々の年齢は、どのようになっているか。

 

具:青少年から中壮年まで広範囲だ。青少年の場合は、私たちが会ってみたところでは、親が非正規職である場合が多かった。生活が困難で、子どもがしたいことを応援してやれない環境。単に携帯電話が買いたくて働いているのではない。大学生になれば、学費貸与のために働き、卒業しても就職ができなくて、またアルバをして…。

 

-あなたと同年輩の人も多いのか。

 

具:もちろんだ。私が2013年にロッテリアで働いていた時、一緒に働いている人の半分ほどが30代だった。ある人は経営していたチキンの店が倒産してアルバに来たが、1日に12~15時間働いていた。借金を返さなければならないから。また、ある人は、ツージョブ(two job)を掛け持ちしていた。非正規職で働いていたが、結婚して子どもが生まれ、職場の月給だけでは生活ができないので、アルバに出て来たのだ。50~60代の層でも、退職はしたけれども、子どもの就職が遅れて学業を継続しているので、何でもしなければならない。聞いてみると、とてもいい会社に通い、3か国語ができ、スペックも相当高い人なのに、コンビニで最低賃金ももらえずにアルバをしている50~60代の年輩の人たちも、何人も会った。マクドナルドに行けば、このような多様な人々を一つの売り場で見かける。大学生、就職準備生、青少年、青年と中年層、そして主婦社員…。

 

-では、年齢や経歴によって賃金が異なるのか。

 

具:マクドナルドは無条件、最低賃金だ。

 

-まったく…(失笑)たいした平等だ!

 

それどころか、最低賃金ももらえていない人も231万人、全労働者の12.6%に達する。具ギョヒョンの話によると、10代から60代までのアルバたちは、同心円のコンベアーベルトに乗って回る消耗品である。それぞれ理由は異なるが、時給労働者の決められたレールから外れられない人生行路。一歩踏み出すごとに一歩ずつ落ち込んでいく蟻地獄のように、アルバに始まってアルバに終わるアルバ人生がある。

   

ファミレスの「子犬ポーズ」

 

  

-先月の初め、梨花女子大の趙ギスク教授がツイッターに掲載した文が論難を引き起こした。百貨店の駐車場で顧客の母と娘の前で跪くアルバ生たちに対して、「1日分の日当を受け取れないことを覚悟して不当なことに堂々と立ち向かう覇気もない若者。貧しいほど卑屈になるのではなく、自分を大切に考えてほしい」と書いたのだが。

 

具:青年アルバ労働者をそうさせたのは、私たちの社会だ。ファミレスに行けば、注文を受ける人が顧客の前に跪いて座る。これを「子犬ポーズ」と言うのだが、主人の命令を待つ子犬になっているわけだ。アルバたちはいつでも簡単に首切りができ、他の所に行けば状況は大きく変わることがない。だから、どんなアルバが甲チル(※)をする顧客に対して何か言えるだろうか。そんなことをすれば、すぐに首を切られるのに。事実、そうして解雇される人も多い。

 

-そうして首を切られて、別の所に行ってもまた屈辱を甘受しなければならない現実を、直接経験できなかったこの社会のエリートたちは、よく知らないことがあり得る。アルバ労組の委員長であるあなたも、アルバをしながら惨憺たる思いをしてきたことがあるか。

 

具:一昨年だったか、ロッテリアで平日の午後1時から夜の8,9時まで配達の仕事をしていた時のことだ。夜に配達が立て込んだら、食事をとる時間を後回しにして配達にでかけることが多かった。ある日、弘大前に配達に行ったのだが、急に悲しくなった。人々は恋人や友人と会ってこの時間を楽しんでいるのに、パン一つを配達するとオートバイに乗っている自分は何なのか?そう考えると、オートバイを荒々しく、騒々しく乗るようになった。パンパンとしきりに音を鳴らしながら。

 

-ああ、それはそんなことだったのか。配達をする人たちのオートバイが騒音をたてるのをしばしば見かけたのだが。

 

具:自分の存在が消えていくような感覚、楽しそうに行き交う人々の間に埋もれているような感覚が浮かぶのだが、自分という存在があるということを自らに強烈に認識させる方法が、オートバイの騒音を出すことなのだ。パ~ンと。

 

-「自分はここにいる!」と叫ぶように…。

 

具:その通り。信号に引っかかると、オートバイが停止線の前に一列にずらっと並ぶ。マクドナルド、ロッテリア、チキン、ピザ…こうして一列に並んで信号を待つ時、彼らから何か濃密な情緒的連帯感を感じる。

 

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 具ギョヒョンを形作った事件

  1997年 戦警  戦警として勤務しながらデモを鎮圧していたが、そこで抑圧された人たちの声を聞きました。世の中が暗く、息苦しいという事実に目覚めたのです。

2005年 障害者の人権運動  全国障害者父母連帯で活動し、障害者の人権運動を始めました。半生を不自由な足で生きた父に借りがあったのです。

2009年 智異山縦走  山は常に私をときめかせます。その中でも智異山は、私をもっともわくわくさせる場所です。智異山を縦走して心が引き締まりました。

2013年 アルバ労組  最低賃金1万ウォン運動をともに担った文ソギ(左)は、私に一生の宿題を残して2013年6月に他界しました。

2014年 甲チル企業  アルバに甲チルをする代表的な企業はマクドナルドです。すべてのアルバに最低賃を与え、アルバを搾取するマクドナルドと今日も戦っています。

※甲チル:

甲乙関係における「甲」に、ある行動を意味する接尾辞「チル」を付けた造語で、権力の優位にある甲が権力関係において弱者である乙に対する不当な行為を通称する概念。インターネットでは、甲の無限権力を皮肉る「スーパー甲」、「ウルトラ甲」という言葉が出回っている。甲のように君臨しようとする人々を指して「甲マインド」を持つ人と呼ぶ。

 

-個人史の話を少し聞きたい。今、30代後半だからもうすぐ40才なのだが、この間、アルバだけをずっとやってきたのか。

 

具:そうではない。アルバ労組を始める前には、障害者団体で2005年から7年間働いた。そこで障害のある学生たちが教育を受ける権利、地域社会で共に生きる権利を要求する活動をしていた。

 

-もともと障害者の問題に関心があったのか。

 

具:必ずしもそういうわけではないのだが…障害者の問題について若干の「敏感さ」はある。70年代、私が2,3才の頃、父が工場で働いていて左足を怪我して、膝から下を切断した。

 

-労災だったのか。どんな作業をしていて怪我されたのか。

 

具:わからない。生前、一度も聞くことができず、父も事故について話さなかった。私が上に姉2人がいて、一人息子だったのだが、小さい頃に父と銭湯に行くのが恥ずかしくて嫌だった。お父さんはどうして他の人と違うのか、お父さんも足がまともで走り回れたらいいのに、そう思いながら大きくなったのだが、後で大人になってから考えると、罪なことをしたという思いが浮かんできて…それで障害者と関連した問題に接すると、より関心が湧いたりした。

 

事故後、父は、母と雑貨屋を経営して、3人きょうだいを育てた。96年に具ギョヒョンは、ソウルにある専門学校の情報通信関連学科に進学した。そして、すぐにIMF事態が起きた。2年の1学期を終えて軍隊に行ったが、「運がなかったのか」戦闘警察に選出された。

 

-その時が金大中政権の時期だったが、デモの現場に出たことはあるか。

 

具:たくさん出動した。99年の地下鉄労組のゼネストにも行き、FTA反対闘争にも行き、最も記憶に残る現場は、麗水化学団地の住民デモだった。麗水に新しい公団を拡張して住民を移住させるのだが、化学薬品の臭いが非常に不快で、バスから降りようとすれば防毒マスクをしなければならないほどだった。ところが、すぐ横にお婆さんとお爺さんの家があった。目の前の海に養殖場を所有していて、それを縦に割いて埋め立て、ゴミ焼却場も建てる予定だと言う。「生計の手段を捨てて、どこに行って住めと言うのか」と抗議をしていた。

 

-そのような事情は、どうやって知ったのか。住民たちがデモをする理由を上官が説明してくれるのか。

 

具:そんなことはない。私が知っている話は、集会の現場で聞いたものだ。

 

-戦警が集会の現場に直立不動の姿勢で立っていれば、この人たちが何を聞いているのかいないのか確認はできないが、そんな話がすべて聞こえるのか。

 

具:みんな聞こえる。集会をしようと三々五々集まっている時には敵対心もなく、孫のようだと「夏なのにしんどくないか?」と言って水や果物もくれた人たちだ。しかし、ある日、鎮圧をかなり激しくやった日のことだった。お婆さんやお爺さんの手足をつかんで引きずり出して押しのけて…その過程で彼らも激しく怒った。私たちに向かって瓦礫を投げつけ、車を運転して突進してきたりもした。優しかった人たちが突然、殺気を帯びた目つきに変るのを見て、ひどく衝撃を受けた。「彼らがどうしてここまで抵抗するのか、あんなにまで抵抗をするのに、官庁という所がこれを妨げているのか?」深刻な悩みがこみ上げて、軍隊を終えたらそのような問題と関連する活動をしなければならないと考えるようになった。

除隊後、アルバを始めた。情報通信分野は就職がいいと思われていたが、非正規職が急速に増えてくる時期だった。同期のほとんどが契約職で入社し、今もほとんどが非正規職で、職場を転々としている。どのみち食べていくためにしなければならない仕事なら、非正規職の最も端っこにあるアルバの問題を正面から取り上げてみようと決心した。自ら「アルバ生」ではない「アルバ労働者」としてのアイデンティティを持ち始めた。2013年1月、志を共にする同僚たちとアルバ連帯を作ったのに続いて、7月にはアルバ労組を立ち上げ、初代委員長になった。

 

アルバたちが無責任だって?裏面を見ろ

 

 

-アルバ労組が今年最も力点を置いている事業は何か。

 

具:2つある。一つは最低賃金の1万ウォンへの引き上げ運動、もう一つはマクドナルドの不当な労働慣行を正すことだ。マクドナルドは非正規職の職場が極度に達した時の形態を見せてくれる典型的な事例だ。例えば「呼び出し勤務」のような方式がそれだ。

 

-呼び出し勤務とは何か。

 

具:マクドナルドが掲げるキャッチフレーズが「わが社は、労働者が来て働きたい時に働く」というものだが、話にならない。実際には人力プールを作っておいて、必要な時にだけ選択的に呼び出す。マネージャーの目に止まらなければ、1週間に2~3時間しか働けないこともある。

 

-労働契約書に勤務時間を明記するようになっているのではないのか。

 

具:そこを空欄にしておくケースが多い。不法だ。また、売り場ごとにレイバー・コントロール(labor control)と言って、売上に対する人件費の比率を決めておく。売り上げが落ちれば人件費も減らさなければならない。従って、昼や夕方に混んで午後3~4時頃には客が少ないから、中間にアルバたちを家に帰らせる。その分の時給を減らそうと、「カット」と言って、超過勤務手当を支払わないように勤務時間表を改変するケースもある。昨日10時間、今日4時間働くと、昨日8時間、今日6時間働いたように変えて。

1993年に社会学者のジョージ・リッチャーが指摘したマクドナルディゼーション(MacDonaldization)は、グローバル時代の経営パラダイムだ。効率性と測定可能性、予測可能性、そして雇用統制を特徴とする。企画化された製造工程と販売戦略、一律的な味と価格。しかし人間は規格化され得る存在ではない。2013年5月、国際食品労働者組合(IUF)の26か国代表は、マクドナルドの低賃金と労組弾圧に反対して、マンハッタンのマクドナルド売場前でデモを行った。昨年11月、アルバ労組の李ガヒョン組合員も、韓国のマクドナルドの不当慣行を暴露した後に解雇されたが、マクドナルドは適法な手続きによるものだったとして、アルバ労組の主張を否認している。

 

-「最低賃金1万ウォン」というスローガンを初めて提起したのがアルバ労組だ。これが現実的に可能なのか?零細自営業者たちも反発しているようだが。

 

具:労働者自身が時給1万ウォンは度を過ぎたものではないかと考えているのが、最も大きな障壁だ。しかし、時給が実際に生活ができる水準になれば、赤字を出しながら無理に自営業をしていく理由がないではないか。今、アルバは一つの職業だ。アルバを何か非正常な状態、抜け出すべき何かと考えるのは、明白に現実から目を背けることだ。アルバをしながら食べていくことのできる基盤が確保されなければならない。そうして初めて、大韓民国労働生産性も高まる。

2015年の最低賃金5580ウォンは、昨年に比べて370ウォン引き上げられた水準だ。現在、韓国の最低賃金は、OECD諸国の中で、上位圏のオーストラリア、ルクセンブルグなどの3分の1にも満たない。1人当たりGNPがわが国(2万5977ドル)より低いスロベニア(2万3289ドル)の最低時給6.0ドルよりも低い。

 

-最後に、読者にお願いしたいことがあるか。

 

具:アルバ労働者に対して「無責任すぎる。出て来たい時に出て来て、ダメになろうがなるまいが気にしない」と話す社長が多い。実際にそんなアルバもいる。アルバも人間だから悪い人物がいないはずがない。しかし、その裏面を見てみると、世間がアルバ労働者をそのようにぞんざいに対応するから、アルバ労働者も適当に働くのだ。アルバは安価な人間、5580ウォンほどの人間だという認識が広く定着している。最低賃金の引き上げは、単純にアルバたちの財布を潤すものではない。多数のアルバ労働者を、この社会がどうやって共同体の一員として受け入れ、人としての対応をするのかを問う契機となるものだ。

 

 

インタビューを終えて別れてから数日後、アルバ労組がマクドナルドに公開警告を送ったというニュースを聞いた。

「売り場占拠警告状:貴社は、不当解雇、不法的なコッキ、最低労働条件などに対していまだに何の回答もないので、2月7日夕刻、売り場占拠を警告するステッカーを発行します。アルバ労組」

2月7日夕刻、アルバ労組が宣戦布告した占拠売り場は、マクドナルド新村店と延世店だ。