韓国KBS放送不可「朴正煕―岸信介の親書」(ニュース打破 20115.11.12)

 

日韓国交正常化当時の朴正煕大統領が岸信介氏に日韓会談の進展のための助力を要請する親書を送った事実をつきとめたKBSの取材チームに、幹部が圧力をかけて放送を阻止した事を明らかにした、在野のネットテレビ放送「ニュース打破」(*1)の放送動画と文字起こしを下記に紹介します。

 

 

 韓国KBS放送不可「朴正煕―岸信介の親書」(ニュース打破 20115.11.12)

 

<キャスター>
 事実、マスコミの関心から見ると、政府樹立後に勲章が授与された70万名の名簿を入手したということが、たいへん大きな特ダネであり、誇るべきことです。しかし、この大きな特ダネを、KBSの幹部たちは、放送できないように妨害しています。
 彼らは、さまざまな内容を削除せよと要求してきたということですが、そのうちの一つが、朴槿恵大統領の父の朴正煕元大統領が、韓日条約締結の過程で、日本の岸信介元首相に送った2通の親書の内容です。どのような内容で、KBSの幹部は、自分たちが取ったこの特ダネの放送を妨害しているのでしょうか。金セボムPDが取材しました。

 

<ナレーション>
朴正煕元大統領は、在任期間中に、70数名の日本人に勲章を授与しました。この中で、KBS調査報道取材チームが特に注目した人物は、岸信介です。日本の総理を務め、安倍現総理の外祖父でもある岸信介は、1970年6月18日に青瓦台で修交勲章光化章を授与されました。朴正煕大統領が彼に勲章を授与した名目は、1965年の韓日国交樹立に対する功労でした。
 岸信介は、日本政界の影の実力者として、韓日条約の締結を水面下で主導した人物です。彼は、1936年に満州国の産業次官に着任して植民地収奪を主導し、以後、太平洋戦争当時、日帝の商工大臣として軍需物資の調達に責任を負うなど、数万人の朝鮮人の青年を強制動員して死に追いやったA級戦争犯罪者でした。

 

<「花岡の涙」、目撃者たちの放送文 2015.8.7>
 日本の秋田県で朝鮮人が最も多く連れて来られた所が、花岡鉱山だった。忠清南道のタンジン郡の出身者だけで80人近くになった。みな、日本の商工省が斡旋して徴用した人々だ。

○茶谷十六:前民族芸術研究所所長
 花岡鉱山は、すべて商工省の斡旋でした。その商工省の最高責任者である商工大臣が、岸信介です。戦後、戦犯として囚われましたが、裁判を免れて、後に総理大臣になりました。現在の安倍総理の祖父です。
○朴ハニョン:民族問題研究所教育広報室長
 1940年代に最も多くの人々が強制動員されて亡くなりました。戦場に動員され、軍人として動員され、労働者として強制連行されて奴隷労働に従事した時、まさにそのようなことを立案して実行に移した責任者です。そのような点で見ると、侵略戦争で朝鮮人を犠牲にした責任者のうちの一人であるということですね。

 

<ナレーション>
KBS調査報道取材チームは、朴正煕と岸の関係を取材する中で、朴正煕が岸に送った2通の親書を確認しました。現在、原本は日本の国会図書館に保管されていますが、韓国国内にその写本が、国史編纂委員会にあります。その手紙にどんな内容が書かれているのか。ニュース打破は、国史編纂委員会を訪れて、確認してみました。
5・16クーデターで執権した朴正煕は、国家再建最高会議議長の資格で1961年8月と1963年8月、当時、総理職から退いていた岸信介に親書を送ります。韓日国交樹立の条約を締結するのに力を貸してほしいという内容です。

「さらに、今後再開される韓日国交正常化交渉における閣下(岸信介)の格別の協力こそが、大韓民国と貴国との強固な紐帯は両国の歴史的な必然性であると主張する貴下の思いが具現化されることだと考えます。」
-1961年8月、朴正煕国家再建最高会議議長が岸信介に送った親書
「韓日間の国交が一日も早く正常化しなければならないということは、私の変わりない信念です。」「貴下におかれましても、常に韓日関係の改善に関心をお持ちになり、積極的な努力を惜しまないことに対して、私は深い謝意を表すところであり、韓日会談の早期妥結のためにより一層の協力を願わずにはおれません。」
-1963年8月、朴正煕国家再建最高会議議長が岸信介に送った親書

学界の専門家たちは、1965年の韓日国交樹立の過程と内幕を垣間見ることのできる資料だと評価しています。

○南ギジョン:ソウル大学日本学研究所副教授
 もちろん、そこには(岸信介の場合)、対等な立場で新たな関係を結ぼうということよりも、いずれにせよ岸の頭の中には、過去にあった満州での経験がベースにあったと言うことは明らかですね。それが、大アジア主義だとか日本盟主論というものが反共主義と結合して、日本がアジアでリーダーの役割を果たす、自任するという立場から出た行動です。

<ナレーション>
 興味深いことは、岸の返信と朴正煕の2度目に送った手紙の伝達者の役割を、親日派の朴興植が引き受けたという点です。
 朴興植(1903~1994)は、日帝に数百万円の金を献金し、1944年には日帝に戦闘機を贈る目的で朝鮮飛行機工業株式会社を設立するなど、日帝の侵略戦争に積極的に協力した代表的な親日派です。そのため、朴興植は、1949年に反民族行為特別委員会の逮捕者第1号として記録され、2009年、大統領所属委員会も、彼を親日反民族行為者と規定しています。
 過去に、カン・サンジュン教授らが執筆した「岸信介と朴正煕」という本で、この親書の内容の一部が言及されたことはありますが、マスコミが親書の正文を確保してその内容と脈絡を紹介したことは、KBS調査報道チームが初めてです。
 しかし、KBSの報道本部の幹部たちは、制作記者チームに、この親書に関する内容をすべて削除せよと要求しました。

○南ギジョン:ソウル大学日本学研究所副教授
 一方は朴正煕大統領の娘であり、もう一方は岸信介総理の外孫であり、そのような関係が現在の韓日関係を引っ張っていくリーダーになっているため、過去の歴史が既視感として迫って来ざるを得ない、そんな部分があるでしょう。過去の歴史が持っている、いまだに解決されていない韓日関係の宿題のようなものが、今、両国を押さえつけていると言うことができるでしょうし、そのことが現政権に負担になっていることは事実のようです。

<ナレーション>
 このように、KBS調査報道チームが深層取材した重要な内容が放送されないままでいる間に、韓日首脳会談が開かれました。しかし、青瓦台の説明とは異なり、日本軍「慰安婦」問題の解決のための実質的進展はありませんでした。むしろ、安倍総理が朴槿恵大統領に、日本大使館の前に設置された少女像の撤去を求めたと言う記事が、日本のマスコミで報道されています。
 朴正煕元大統領が戦犯の岸に送った手紙と日本人に授与した勲章の内訳を通じて、現在の韓日間の過去史問題の根本を暴き出したKBS調査報道チームの取材努力は、KBS幹部の統制に妨害されて、水の泡となってしまいました。

 

 

 

 

 

 

*1:「ニュース打破」に関するハンギョレ新聞記事(2012年1月31日)

≪ニュース打破≫初回放送4日間で30万回照会 : 政治 : ハンギョレ

 

 

[動画出典] 

https://www.facebook.com/100008801346833/videos/1492430204393677/?fref=nf