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慰安婦合意、韓国の主権国家放棄宣言

日本軍「慰安婦」問題

 

プレシアン 朴インギュ編集委員  2016.1.1

 <分析>「朴槿恵政府、数十万女性の人権と尊厳を投げ捨てる」

   以下は、去る12月28日の慰安婦問題に関する韓日合意に対する、米国の活動家・作家・教員のK.J.Nohの批判である。

 彼女は、慰安婦問題とは、1932~1945年に日本帝国の体系的計画と組織によって実行された戦争犯罪であり、その被害者は数十万人に達すると指摘する。歴史学会の研究によると、そのうち40%は自殺を選び、生存者の比率は25%に過ぎない。ナチのホロコーストに比肩する残酷な性搾取の戦争犯罪だったということだ。しかし、慰安婦問題は、当事者たち沈黙の中で、1991年までその実像が世に知られることはなかった。その年、韓国の金学順ハルモニが、苦痛と羞恥をはねのけ、勇気をもって自身の過去を告白することによって、慰安婦問題は初めて世界の公論の場に登場した。

  それゆえに、慰安婦問題は、韓国政府が強弁するような韓国の生存者46名の慰安婦ハルモニだけの問題ではない。世界の数十万女性の生命と人権、尊厳と名誉がかかった問題だ。ところが、韓国政府は、今回の合意を通じて慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に」解決したと宣言することによって、日本の戦争犯罪を追及する道を完全に閉ざしてしまった。韓国の犠牲者が提起した世界の重大な人道的問題に、韓国政府は蓋をしてしまったのだ。

  筆者は、「人類の歴史上、強大国の政府が公式謝罪をしながら、事後の被害者による問題提起や批判を禁止した例はない。戦争犯罪と人道主義に反する犯罪には、いかなる制約も条件もあり得ない。これらの犯罪について沈黙を強要してもならない。ところが韓国政府は、まさにこのような前提条件に合意をした。このような全面的な降伏、これ以上の道徳および主権の放棄は、想像すらできない。このようなものが謝罪だとしたら-そして韓国がこれ以上の批判を提起できないとしたら-韓国は自ら主権国家であることを放棄したのだ」と指摘する。

 筆者は、韓国政府がこのように話にもならない政策をとった理由を、米国のアジア回帰政策に求める。米国は、力を増す中国を封鎖するために、韓国と日本の軍事・政治同盟が必要であり、この同盟を妨げる最大の障害物が慰安婦問題であったからだ。結局、米国は世界覇権の維持、日本は軍事化による過去の帝国の熱狂の再現、韓国は米国への盲従という狂気に引きずられ、数十万の女性の生命と人権、尊厳と名誉がかかった重大な人道的問題の根源的解決の道を塞いでしまったのだ。今回の慰安婦合意は、一言で言うと「狂気への回帰」というのが、彼女の結論である。

 この文章は、米国の進歩的メディアである<カウンターパンチ>12月31日付に掲載され、原文は以下で見ることができる。

http://www.counterpunch.org/2015/12/31/south-koreas-betrayal-of-the-comfort-women/

 

慰安婦犠牲者に対する韓国政府の背信  <外交的癒着>

 

 2015年12月28日、韓国と日本の外務長官は、突然、そして性急に、「慰安婦」問題の「解決」を宣言した。日本の総理大臣個人のお詫びとともに賠償のための基金を作るというものだった。

 日本の外相は、「『慰安婦』問題は、当時の軍の介入の下に数多くの女性の名誉と尊厳を深く傷つけた事件」であるという点を認める。また、生存している46名の慰安婦ハルモニを支援するための基金の立ち上げのために、10億円の出資を約束した。

 これについて、韓国の慰安婦ハルモニたちの運動団体は、今回の合意が「背信」であり「詐欺」であると強く反発している。あるハルモニは、会見の場で泣いた。野党の政治家たちは外交部長官の委任を要求した。駐韓日本大使館前では抗議のデモが行われた。

 日本の活動家の団体である「従軍慰安婦のための韓国協議会」は、今回の合意は「衝撃的」だとして、次のように語った(訳者注:これは、韓国の挺身隊問題対策協議会の尹美香常任代表のコメントだと思われる)。

  「今回の合意は、韓国にとっては屈辱的外交である…慰安婦ハルモニと韓国国民の願いを徹底的に裏切った外交的癒着に過ぎない…このことで(慰安婦問題に関する)去る25年の進展がすべて無駄になった」

  元慰安婦であり積極的な活動家である李容洙ハルモニもまた、今回の合意を非難した。「犠牲者をまったく考慮していない合意だ。私は全面的にこれを受け入れない」と糾弾した。

  慰安婦ハルモニたちは、どうしてまだ満足できないのだろうか?世界のメディアは(今回の合意を)称賛しており、米国務省はすぐさま歓迎し、広報に乗り出しているのに。表面的には、今回の合意は合理的なもののように見える。(日本が)謝罪の書簡とともに、慰労金または賠償金を提供するからだ。この問題は70年にもなり、何の合意もないよりも遅ればせながら合意することが良いのではないか。慰安婦ハルモニたちは、それ以上何を望んでいるのか?

  この問題を正しく理解しようとするなら、歴史をもう少し深く見てみる必要がある。

 歴史の真実が明らかになる

  いわゆる「慰安婦制度」というものは、1932年から1945年まで、大日本帝国の軍隊がアジア全域で-主に朝鮮、台湾など日本の植民地であった11の地域で-数十万人の女性を拉致および性奴隷に転落させた計画的かつ組織的な犯罪行為だった。この制度が始まって拡大していく過程で、初期には一部の職業的売春婦が動員されたこともある。しかし、すぐに女性に対する性搾取のための一種の産業システムとなり、膨大な規模になって、現代史上に類例のない大規模の性搾取へと発展した。「慰安婦制度」とは、(ナチの)ホロコーストによる大量虐殺に比肩する戦時の性搾取および虐待である。産業的規模の強姦工場、すなわち全面的かつ組織的で合理的な計算された(女性の)調達、監禁、拷問、虐待、性奴隷化、そしてテロが恣行されたのだ。

  戦争が終わった後、このような野蛮な歴史は、政策、政治、偏見の記録から完全に消された。歴史の記憶喪失を誘導するための陰謀だった。拷問と鞭打ち、(手足の)切断と連日の強姦―1日に最高50回まで―から生き残った慰安婦の女性たちのうち、一部は退却する日本軍の兵士に殺された。歴史学者は、日本軍慰安婦女性のうち生き残った率が25%程度だと推算する。戦場に投入された兵士、大西洋奴隷貿易によってアフリカからアメリカに連行された黒人奴隷の死亡率よりも高い。これは、「慰安婦」問題が20世紀史上最大の、認定されていない、さらには解決されていない虐殺行為であることを物語っている。 

 実際にどれほど多くの女性が拉致、徴発されたり、または騙されて、あるいはそのまま売られたのか、その数字を知る方法はない。報復を恐れた実行当局者たちがほとんどすべての記録を破棄したからだ。しかし、その数字は数十万に達するものと推算される。

  特に、慰安婦制度が日本政府によって体系的に計画、組織されて執行されたという事実には、疑問の余地がない。日本軍が占領したはるか彼方の植民地地域にまで連行するために、慰安婦の女性たちは、日本政府から旅券とビザを発給されていたからだ。慰安婦の女性は、日本の軍用艦船に乗せられて、日本軍の兵士の監視を受けて移動した。いわゆる「慰安所」は、日本軍の基地内、または近隣地域に設置され、おおむね日本軍当局が管理していた(一部は軍当局が民間業者に下請けをさせた)。また、軍医が女性を「点検」した。ある事例では、次のような生体実験に利用されることもあった。一人の女性が一日にどれだけ多くの強姦に耐えられるか?または、性病はどのように伝染し、どのように予防できるか?

  (第2次世界大戦当時)大日本帝国の会計指針によれば、慰安婦の女性は軍需品の一種として、使い捨ての「消耗品」として扱われた。ここにはまた、(慰安婦女性に対する)賃金の支給日、一般兵士と将校の慰安婦の使用日程などが記載されている。一部の人々は、慰安婦制度が民間のブローカーや事業家によって作られた自発的な「歓楽事業」だったと主張する。しかし、これらは、戦争当時の日本軍の調達システムがどのように運用されていたのかを見逃している。また、当時の日本政府がファシズム軍部独裁政権であり、物品の調達、分配、供給などの部門を政府が直接統制、管理していた統制経済であったという事実を無視している。米をはじめとするすべての生活物資、労働者、女性に至るまで、一定量を割り当てる政府の組織が発表すれば、植民地地域はこれに従わなければならなかった。

 去る70年間、日本政府は、(米国の支援と示唆を受けて)このような慰安婦制度の存在自体を否定してきた。生き残った少数の慰安婦女性は、(社会の)陰に隠れて、疾病と悪夢、言葉に表せない苦痛と羞恥を耐えねばならなかった。彼女たちのほとんどは、ひどい性的暴力によって不妊になり、ほとんどは自分の肉体がどうしてダメになってしまったのか、その秘密を墓場まで持って行った。そして1991年、たった一人の韓国人慰安婦女性が勇敢に名乗り出て、沈黙を破った。

 「一人の女性が生涯の秘密を話した時、どんなことが起きたのか?世界の隠された真実が明らかになる。」

 詩人のミュリエール・ルーカイザーはこのように言う。金学順ハルモニがまさにその女性だった。彼女が姿を現して自分の人生を語った時、韓日間の歴史の中の隠された秘密が満天下に晒された。金学順ハルモニは、他の慰安婦ハルモニに自身の話を打ち明けて勇気を与え、これら慰安婦ハルモニたちは、徐々に前面に出てきて、日本を批判し始めた。ハルモニたちの声は、半世紀の間抑圧されてきた恥辱の沈黙と憤怒のために震えていた。

 「天皇に、私のところへ来て跪いて許しを乞えと伝えてくれ。私は謝罪を望んでいる。私たち全員に。」

 ある慰安婦ハルモニはこのように言った。ハルモニたちの声が大きくなるほど、犯罪の証拠も積み上げられていった。しかし、日本政府は、責任を免れるために、のらりくらりとするばかりだった。しかし、時間が経つにつれて、否定による負担が認定による当惑よりも大きくなっていった。韓国の親日派が傍観する間に、韓国政府が積極的に前面に立ち、ついに1993年、日本政府が責任を認めた。いわゆる河野談話がそれである。曖昧で、形式的で、生ぬるい謝罪だった。それも、国家首班ではない官房長官名義であった。

偽の謝罪、真の謝罪

 河野談話は、日本の国会が発表したものでも、国会の批准を受けたものでもなかった。したがって、法的効力を持つ公式謝罪ではなかった。それにも関わらず、日本では、(日本の)責任の認定に向かう重要な第一歩だという点で歓迎された。ある意味では、河野談話は、慰安婦問題を前向きに論議していく適切なきっかけではあった。当時、日本政府は、民間の賠償基金(アジア女性基金)の創設を支援し、慰安婦被害者に伝達する寄付金を集めた。

 当然、慰安婦ハルモニのほとんどは、このような(非公式的で法的効力のない)謝罪と慰労金を拒否した。彼女たちは、依然として真の謝罪を望んでいる。特に、慰安婦ハルモニたちは、常識と理想に基づいて、次のような措置を求めている。

○1932~45年に大日本帝国の軍によって性奴隷化が計画、組織、執行されたという点を全面的に認めること

○日本の国会が公式で法的効力を持つ謝罪をすること

○すべての犠牲者に対して、法的で全面的な賠償をすること

○慰安婦の女性の犠牲を記録し、日本軍の性奴隷化の歴史を保存するための記念碑を設立すること

○戦争犯罪に対して責任ある犯罪者を起訴、処罰すること

 これらの要求のうち、どれも(以前の謝罪を含めて)今回の合意で充足されていない。まず、慰安婦制度が日本政府の公式の政策であったという点を認めていない。軍部が「介入」したという漠然とした言及だけがあるだけだ。(慰安婦女性の)「苦痛と受難」に対する包括的な遺憾の表明があったのみで、その苦痛の原因は特定されていなかった。反面、河野談話にあった「強制」という単語は消えている。言い換えれば、安倍政権がしつこく主張してきたように、慰安婦の女性は自発的な娼婦であったという点を、間接的に認めたものだ。さらに安倍政権は、雀の涙ほどの金額(10億円)を寄付することで、直接的かつ法的な賠償の義務を回避した。これから日本の公式謝罪(国会で批准される)はないようだ。戦争犯罪に対する調査、犯罪行為者に対する処罰、戦争犯罪に対する教育は、はるか彼方に行ってしまった。特に、日本は、今回の「謝罪」とともに、(今回の合意が最終的で不可逆的だという理由で)韓国がこの問題をこれ以上問題提起できなくした。これから永遠に、韓国は、この問題に関して日本を批判できなくなった。おそらく(駐韓日本大使館前の)少女像は撤去されるだろう。今や、慰安婦問題は、安倍総理と岸田外相がうんざりするほど叫んできたように、「不可逆的に解決」した。

 人類の歴史上、強大国の政府が公式謝罪をしながら、事後の被害者による問題提起や批判を禁止した例はない。戦争犯罪と人道主義に反する犯罪には、いかなる制約も条件もあり得ない。これらの犯罪について沈黙を強要してもならない。ところが韓国政府は、まさにこのような前提条件に合意をした。このような全面的な降伏、これ以上の道徳および主権の放棄は、想像すらできない。このようなものが謝罪だとしたら-そして韓国がこれ以上の批判を提起できないとしたら-韓国は自ら主権国家であることを放棄したのだ。

 いったい、韓国政府は、なぜこのような話にもならない謝罪を受け入れなければならなかったのか?

狂気への回帰

 天動説を信じる限り、地球など惑星の軌道を正確に予測することはできない。太陽が太陽系の中心であるという点を認めなければ地球の動きを知ることができないように、「米国という太陽」の重力を認めなければ、韓国政治の不合理で退行的な行動を理解することはできない。このような点を念頭に置けば、次のような韓国政府の不合理で自己敗北的な行動の原理を理解できる。自虐的な貿易協定、自己破壊的な経済政策、そして環境、市民社会、経済の膨大な犠牲を払った軍事基地の建設など。今回の慰安婦に関する韓日の合意は、まさにこのような狂った政策の当然の帰結だった。

 去る10年間、米国は、アジア太平洋地域への回帰を準備してきた。去る150年間の米国は、いつでも太平洋を自分の独占的勢力圏(American Lake)として、太平洋周辺諸国を属国とみなしてきた。1882年の朝米相互通商条約の米国側代表であるシューフェルト提督は、次のような華麗で性差別的な問題文体で、米国の優位に対する確信を明らかにしている。

 「米国は新郎であり、中国、日本、朝鮮は新婦である…われわれ米国人は、『新郎が太平洋を渡ってこれら新婦のところにやって来たゆえ、今後いかなる商業的ライバルや軍事的競争者も、われわれの許しなしには太平洋を意のままに行き来できないことを明らかにする…東洋と西洋が太平洋で一つになることで、帝国に向かう(米国の)挑戦は終着駅に到着し、人類の力は絶頂に達する。』

 現代地政学の父であり英国の地理学者であるハルフォード・マッキンダー(米国のアルフレッド・セイヤ―・メーハンとともに)も、これと同様に、ユーラシア大陸を「中心地域(heartland)」「主軸国家(pivot state)」または「世界島(world island)の中心」と呼んだ。

 マッキンダーとメーハンの理論は、世界情勢を「大陸勢力」対「海洋勢力」の角逐と理解する。二人とも、世界を支配するためにはユーラシア大陸の中心を掌握しなければならない、と信じている。

 マッキンダーの表現を借りれば、「中心地域を支配する者が世界島を支配し、世界島を支配する者が世界全体を支配する」のだ。

 米国政府、学界、シンクタンク、そして軍部内の国際関係および地戦略的(geo-strategic)思想家たちは全員、自分が認めるか認めないかに関わらず、マッキンダーの息子である。アジアで中国が勃興する時点、マッキンダーの亡霊に憑りつかれて21世紀の米国の単一覇権の維持を夢見る米国の地戦略思想家たちは-ヒラリー・クリントンは彼らの代弁人だ-、迫り来る地政学的変化を感知して、その対策として「アジアへの回帰」を提出した。ヒラリーが2011年に<フォーリーン・アフェアーズ>に寄稿した「米国の太平洋世紀」がそれである。世界島の主軸国家(中国)に回帰しようというものだ。ヒラリーは次のように言う。

 「世界政治の未来は、アジアで決定されるだろう…米国はまさにその中心にいる…したがって、次の10年間、米国政治の最も重要な課題は、アジア太平洋地域に対する実質的な投資を-外交、経済、戦略、その他諸々-増大させ、米国の国益を確保することである…今や、アジア太平洋地域は、世界政治の舵取り役となった…アジア太平洋地域への戦略的旋回は、米国の世界的指導力を確保・維持するためのグローバルな努力が追求される、当然の目標である」

 アジアへの回帰が現実的に意味するところは、米国の軍事力の60%をこの地域に配置しているということだ。中国の地域的影響力を遮断するための措置である。このために米国は、中国周辺の米軍基地を首飾り型に配置している。公海戦などの攻撃的な軍事テキストを採択して、(中国を除く)アジア諸国との二国間、あるいは多国間の軍事協力および合同軍事訓練を実施しており、先端武器の搬入など、アジア地域全体を再軍事化させている。米国はまた、「航海の自由」「合同軍事訓練」などを口実に、(中国の海上輸送路の中心である)南シナ海で、中国に対して敵対的で好戦的かつ挑発的な軍事的緊張を作り出している。のみならず、マスコミを動員して、中国を限りなく悪魔化するやり方で情報および文化戦争を仕掛けている。(南シナ海の領土紛争に関連して)フィリピンを前面に出して中国を国連海洋法協約(UNCLOS)に提訴させた法律戦争、中国に対する封鎖と孤立、さらにはTPPという通商協定を通じた中国との経済戦争も展開している。

隷属の渦

 アジア回帰の中心は、韓国と日本の軍事・政治同盟を通じて中国に挑戦し、中国を封鎖したり脅迫して、必要とあれば打倒することだ。このような米国の作戦が成功を収めるためには、日本は「不沈空母」、韓国は「橋頭保」または「前進ルート」とならなければならない。万一、中国と全面戦になれば、韓国のすべての兵士と装備、軍事基地は、米軍司令官に指揮されることになる。一方、日本は、最近、平和憲法を無力化させ、世界のどこでも米国を助けて攻撃的な軍事作戦を展開できるように、日米軍事協定を改定した。韓国と日本の間の情報共有協定、そして両国のミサイル防御システムの相互運用性の確保もまた、(中国に対する)攻撃的前進戦略の一部だ。ところが、最近まで「慰安婦」問題をめぐる韓日の対立が、両国の効率的な軍事協力を妨げる障害物だった。米国の二つの核心的なパートナーが互いに対話もしない関係だと、アジアへの効果な回帰は期待できない。今やその障害物が消えたことで、「アジア回帰」は計画通りに進行するだろう。

 (就任後、対話を拒否してきた)韓日両国の指導者が初めて対話をしたのは、2014年3月だった。まさにオバマ大統領が斡旋した席だった。家長である米国が、仲の悪い兄弟に和解せよと命令したのだ。今回の慰安婦合意は、その命令の最終的な結果だった。二人の兄弟は家長の言葉を聞いて、経済、軍事などすべての分野での協力を妨げていた障害物を除去したのだ。その間、米国務省は、韓日の和解のために、公開・非公開で多くの努力をしてきた。時には両国をたしなめもし、時には失敗もした。いずれにせよ、米国はその望みを達成した。しかし、下手をすると、今回の成功を後退させることになるかも知れない。

 自国の便宜と地政学的な国益だけを追求すれば、決して文明化された政策を立てることはできない。同様に、歴史的な記憶喪失と道徳的破綻、そして強大国に対する一方的隷属は、災厄へと進む近道だ。韓国の現代史は、今回の合意が、50年前の対米隷属である朴正煕政権が推し進めた韓日協定の延長であることを物語っている。韓日の国交を正常化した1965年の協定は、不平等かつ非民主的で、大多数の国民の支持を得られなかった合意だった。この協定は、流血とテロの中で辛うじて維持されていた。

 軍事独裁者の朴正煕は、日本の関東軍に服務した親日分子だった。1965年当時も、今と同様に、中国に対する恐怖と嫌悪が米国のアジア政策を支配していた。米国務省の政策企画委員会のウォルト・ロストーは、韓国に圧力をかけて日本と国交を回復させた。近代化論の信奉者だった彼は、自身の著書の<経済発展段階論:非共産主義者宣言>に出てくるように、韓国と日本、そして他のアジア諸国の間に、強力かつ協力的で相互結合した資本主義ブロックを形成することによって、アジア地域に勃興する共産主義に対抗する要塞にしようとした。共産主義イデオロギーの拡散に抵抗する権威主義的な民族主義者は、誰であっても米国の支援を受けた。これらの国々は、ロストーの理論によれば、輸出志向的産業化に力を注ぐことで、「経済の跳躍(take off)」を成し遂げ、資本主義の優越性を証明しようとした。これを通じて、社会主義、輸出代替産業化、自主的経済を指向した(第3世界の)独立運動の挑戦を退けようとした。

 安倍現総理の外祖父である岸信介は、日帝時代の商工相を務め、朴正煕の助言者でもあった。韓日基本条約の締結を支援するために駆り出された岸は、自分の過去の部下であった朴正煕を説得して、1965年6月に韓日国交正常化を成就させた。その協定は、韓国側のすべての賠償要求を否定していた。韓国国民の抗議と憤怒が爆発し、朴正煕は戒厳令でもって対応した。韓日基本条約を通過させるために、数多くの人々が拘束され、拷問された。今、彼の娘が、またもまったく同じように、暗鬱な歴史に直面することになるだろう。

 一方、安倍政権は、凶悪なやり方で慰安婦問題を迂回した後、軍国主義に向かって突っ走っている。若干の見かけの変化を除いては、日本が放棄したものはほとんどない。謝罪すらもなかったし、メンツを潰されてもいない。むしろ、河野談話にある謝罪の表現を若干後退させた。その対価として日本は、ついに韓国政府を沈黙させ、これによって将来的に韓国国民をも沈黙させるだろう。今や日本は、ファシズムの復活と軍事化のためのすべての準備を整えた。去る半世紀、日本を支配してきた平和憲法も無力化させた。安倍は、過去の大日本帝国の復活を夢見る極右的、民族主義的、軍国主義的イデオロギーを信奉している。5億ドルの予算をかけて日本の歴史の汚点を除去しようとしている。また、日本の政治家と外交官は、過去と現在、未来の大日本帝国の栄光という夢に挑戦状を突きつける人は、誰であっても脅迫し、袋叩きにする。

 アジア回帰の成否に関係なく、米国が日本の軍国主義というパンドラの箱を開けたことは、痛恨の極みである。中国との戦争の危機の高まりは、どのような謝罪も役に立たない狂気の現れであるからだ。しかし、歴史は私たちに、想像できないことが実際に起きたとしても、決して驚くなと言う。慰安婦問題がまさにそうではないか。

 

朴インギュ:ソウル大学を卒業後、京郷新聞でワシントン特派員、国際部次長を経て、2001年にプレシアンを創刊。編集局長を経て2003年に代表理事に就任し、2013年にプレシアンが協同組合に転換すると理事長になった。南北関係および国際情勢に関する専門知識をもとに連載を続けている。