北朝鮮、国連、戦争プロバガンダ(国際刑事弁護士クリストファー・C・ブラック)

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西側のプロバガンダ宣伝は現在極地に至り、服従しない民族とその国の人民に対するデマ宣伝を絶え間なく並べ立てる米国とその同盟勢力の犯罪的な圧力行為によって爆発寸前にまで進んでいる。

 

米国が国連人権理事会の「調査委員会」が作成した「報告書」に基づいて、朝鮮民主主義人民共和国を国際裁判所に付託することにした犯罪的な内容の決議案を主導したのは、これらのプロバガンダ・マシンを利用した結果であり、それはまた、世界を主導・支配するための自らの目的達成のための手段に、国連という機構を利用した実例でもある。

 

調査委員会の報告書そのものはきわめて驚くべきものである。内容が不自然なことだけでなく、調査委員会の委員たちが朝鮮民主主義人民共和国で起きていると主張した犯罪的内容が、実際においては米国内にも存在するものだからだ。

その偽善は、人々を気絶させるほどであった。報告書の段落31では、委員会が行った公開聴聞会が米国、英国、日本、韓国の支援によって行われたとしたが、彼らみんなが朝鮮の敵対勢力であって、報告書で述べたすべての統計資料、集会場、翻訳員、技術、安全、印刷物、重要な証人を彼らが提供したという事実に誰もが驚かざるを得ないだろう。

また、委員会の3人のメンバーであるオーストラリア人のマイケル・ドナルド・カービー、セルビア人のソーニャ・ビセルコ、そしてインドネシア人のマルズキ・ダルスマンら全て、米中央情報局(CIA)の活動団体に加担した経歴があるという事実にも驚かざるを得ない。

 

朝鮮民主主義人民共和国に関連する特別報告者であるダルスマンが発表した最初の報告書は、朝鮮民主主義人民共和国に関する委員会を設けるための基本文書として活用された。

彼は、米国の”友人”としてよく知られている日和見主義者で、インドネシアのゴルカル党のメンバーであった。この党はCIAの支援の下、1965年に50万人の共産主義者と左翼系および労働界関連運動家らを殺害したことで有名である。

彼は現在も、米政府の活動グループである米国インドネシア協会の顧問になっている。米国インドネシア協会の会長はデービッド・メリルという者で、彼は1980年代と1990年代にアジアおよび東欧諸国で米国CIAフロント組織として知られていた国際開発庁の高官であったし、バングラデシュ駐在米大使を務めた経歴も持っている。

 

ダルスマンは国際指導部財団のメンバーである。この財団の後援者はジョージ・W・ブッシュ、レフ・ワレサのような不穏な人物である。この財団は、以前の西側指導者の連合で、世界の国家元首に国家運営に関する助言を与えるという。

しかし、その助言を民主的な手順から脱して人々が分からないように秘密裏に行われている。彼らが掲げているスローガンは「指導者に対する統治支援」である。もちろん、当該国の住民は自分たちの代表を推して彼らが自国の指導者たちの国家統治に助けを与えなければならないと言っているが、現実は明白にそのようになっていない。英軍の元将軍で、英王室海兵隊の元総司令官であるロバート・フルトンが財団の責任取締役、責任者になっている。

財団はスイスの法人組織となっているが、本部はロンドンにある。この組織の財政がシェブロン、バークレイズ銀行、ゴールドマン・サックス、アルカテル、BAEシステムズ、エクソンモービル、フォード財団など、各種の団体によって保障されるという事実は別に驚くことでもない。

 

調査委員会の二人目の委員はソーニャ・ビセルコで、彼女はセルビアで最も憎まれている人物であり、NATOの側に立っている希世の反逆者と見なされている。彼女は、1990年代にミロシェビッチ大統領に反対して米国、NATOと露骨に共謀し、1999年にNATOが自分の祖国であるセルビアに反対して行った爆撃行為を支持し、ミロシェビッチをハーグのNATO裁判所に付託することを主張した。

ソーニャ・ビセルコは、米国際開発処の後援を受けるヘルシンキ人権グループの創始者および理事長である。ヘルシンキ人権グループは、CIAの活動団体であるヒューマン・ライツ・ウオッチと連関のある機構である。ソーニャ・ビセルコはまた、米政府の公式団体である米平和研究所の高位人物である。この研究所の理事会メンバーは、議会の承認の下で米大統領が任命する。理事会のメンバーの中には現在、チャック・ヘーゲルとジョン・ケリーも属している。

 

マイケル・D・カービーは、ドイツのソビエト管轄区域でのいわゆる人権蹂躙(じゅうりん)行為調査のために西ベルリンに組織された機構である国際法律家委員会の元委員長であった。国際法律家委員会は自由法律家のためのアメリカ財団とフォード財団を通じてCIAから資金を与えられ、同機構の創始者の中には元CIA長官であるアレン・ダレスも属していた。

国際法律家委員会は、全世界の左翼系法律家の機構である国際民主法律家協会に対峙して組織された機構であった。この記事の筆者であるわたしもやはり、国際民主法律家協会の一員である。カービーは、1990年代にオーストラリアを共和国につくろうとする努力を妨げた人物として、オーストラリアでの英国の君主政治を維持することを主張した立憲君主制のためのオーストラリア人の会の創設メンバーでもある。

 

この3人の人物はみな潘基文が任命した人々で、潘基文と言えば、反腐敗政策に反対した国連内の監視部署である内部監視室の独自性を非難したことにより、また2010年の「天安」号危機の際、朝鮮民主主義人民共和国に反対する国連安全保障理事会の行動を求めた偏向的な行為によって、国連内に不安を醸成した人物である。

国連事務総長は、国連安全保障理事会の見解を反映しなければならない。しかし、潘基文は米国、英国、フランスの機嫌を取りながらロシアと中国を無視する傾向を見せたが、これは彼が米国の操り人形である韓国で高位外交官の職務を長い間務めていて、ブッシュ大統領の支持下で国連事務総長候補になったという事実を見れば、別に驚くべきことではない。

 

調査委員会が作成した文書の不合理さは、始めの部分からも明白に分かる。報告書の段落2には、次のように指摘されている。

「調査すべき違反の内容には、飲食の権利、収容所、拷問および非人間的な虐待、独断的な監禁、差別、表現の自由、生存権、移動の自由、他国への拉致の形態で強行される強制的な失踪などが属する。」

これを読んでみると、調査委員会がアメリカ合衆国内に存在する状況に対する調査を行っている気がする。

なぜならば、米国で人口の5分の1が飢餓を避けて食料購買券に依存しており、収監者は個人企業によって強制労働力に利用されているからであり、一般の収監者と戦争捕虜に対する拷問と非人間的な虐待が日常茶飯事になっているからだ。米国では、人身保護令状が中止され、全世界的範囲で遠まわしに表現するならば、「犯人引き渡し」計画によって強制的な失踪を伴う独断的な監禁行為が一般的な現象となっており、また米国の政治に同意しない人々にとっては表現の自由が甚しく制限されており、移動の自由は政府が承認した国にのみ制限されており、また多くの少数民族、特に黒人、中南米人、貧しい人々に対する警察の殺人行為が日を追って増える中、このような人々の生命権は保障されていないからだ。

 

しかし、調査委員会の委員たちは米国政府によって米国人を対象にして強行される人権犯罪行為についてはあまり関心を寄せていない。むしろ、彼らは政治的動機から発した米国の代理人として見せしめ式聴聞会を催し、政治目的の報告書を作成している。

報告書の段落12では、朝鮮民主主義人民共和国が調査委員会の報告書で示したすべての主張を反ばくして2014年9月13日に自国の人権状況に関する167ページの朝鮮人権研究協会の報告書を作成したと指摘した。朝鮮民主主義人民共和国が国連の報告書を反ばくして、証人らの証言が偽りであると主張したのは驚くべきことではない。この主張は、この記事の筆者だけでなく、NATOの支配下にある旧ユーゴスラビアで、そしてルワンダ裁判所で弁護士らが経ている体験に鑑みると、深刻であると言わざるを得ない。これらの所では、米国に操られる検事による証人の証言偽造が優先的なつくり上げ方法に利用されている。

 

調査報告書ではまた、「報復を恐れて朝鮮民主主義人民共和国を訪れたことのある多くの外国人訪問者が自分たちの体験と情報について調査委員会と意見を交わすことができなかった」と指摘した。この文句は、国際民主法律家協会に属している全米法律家組合を代表する弁護士代表団の一員として2003年に朝鮮民主主義人民共和国を訪れたことのある筆者にとって、実に驚くべきことだと言わざるを得ない。当時、代表団の訪問記が全米法律家組合のウェブサイトに掲載された。

 

訪問記は、朝鮮社会のすべての面について取り扱ったが、調査委員会は一度もそれを読もうとしなかったし、われわれの見解を聞くためにわれわれと接触しようとする試みもなかった。調査委員会の委員たちは、われわれが平壌に到着した日、ホテルでわれわれが会った5人の米軍将校にも会わなかった。その米軍将校らは、米軍遺骨調査チームのメンバーで、彼らの使命は朝鮮戦争当時に死亡した米軍兵士らの遺骨を確定することであったし、彼らは朝鮮のすべての地域を自由に行き来することができた。

 

その時、われわれはいわゆる"孤立した国"と知られているこの国で、われわれが初めて会った人々が米軍将校たちという事実にとても驚いた。われわれは朝鮮という国に到着したばかりであったし、また何事が待っているのかも全く分からなかったので、彼らにこの国について、そしてこの国の状況についてどう考えているのかを聞いた。驚くべきことに、ある米軍少佐は次のように述べた。

 

「わたしの言葉を引用せず、またわたしの名前を明かさないでくれ。ハワイを発ってここへ来る時、われわれは北朝鮮は地球上の地獄だと言われた。しかし、ここにわれわれは2年目滞在しているが、われわれが聞いたことの中で合う言葉は一つもない。ここは良い所であり、人々もわれわれを親切にもてなしてくれる。われわれが西側のメディアから聞いたすべて、われわれの上司がわれわれに言ったすべての言葉が完全に、そしてすべてうそだ」

 

このような内容は、この国を発ちながらわれわれが会った二人のコンゴ共和国外交官との対話でも引き続き聞かれた。われわれは彼らにどのような体験をしたのかと尋ねた。彼らは自分たちが朝鮮について以前に聞いていたすべてが完全なデマ宣伝で、詐欺であったということから大きな衝撃を受けたと言った。彼らは、朝鮮の人々のように暮らすのが大部分のアフリカ人が願っている夢だと述べた。

 

これらすべての結論として言えるのは、調査委員会の報告書は米国の宣伝行事であったということである。それは、次の事実からより明白に分かる。国際刑事裁判所の規約によって、安全保障理事会がローマ条約の加盟国である国々に対してのみ付託することができるにもかかわらず、朝鮮民主主義人民共和国が条約の加盟国でない事実を知りながら、調査委員会はこの問題を国際刑事裁判所に付託することを安全保障理事会に訴えた。そして、調査委員会は米国とその同盟勢力の宣伝道具として悪名をとどろかしている特別裁判所に問題を付託することも求めている。調査報告書の唯一の目的は、朝鮮民主主義人民共和国政府を犯罪的なものに描写し、西側の人々にDPRKとの戦争を準備させようとするところにある。

これは、米国が旧ユーゴスラビア、イラク、アフガニスタン、リビア、シリア、そして最近、マレーシア旅客機に対する攻撃に関連してオーストラリアでのG20会議でオバマがロシアに反対して取った宣伝戦略と同じである。

 

苦い教訓は、いったん犯罪のレッテルが張られれば、戦争の手先らがすぐ発動されるということである。歓迎に値する兆候は、否定的な宣伝キャンペーンにもかかわらず、ロシアや中国をはじめ数多くの国が朝鮮民主主義人民共和国に反対する決議案を排撃したことである。

これらすべての事実から、われわれはつねに警戒状態を維持すべきだということが分かる。それは、このようなキャンペーンの基本目標が、NATO同盟国をして、彼らが次に計画された戦争を支持するようにし、最小限にそれを阻まないようにしようとするところに目的があるからだ。

 

※クリストファー・ブラックは、トロントに拠点を置く国際刑事弁護士で、彼はカナダ弁護士会のメンバーであり、オンラインマガジン「ニューイーストアウトルック」で、人権や戦争犯罪関与のケースで注目を集めている。

 

[原文] North Korea, The UN, And War Propaganda

North Korea, The UN, And War Propaganda | New Eastern Outlook