「慰安婦は人身売買犠牲者」安倍首相発言と、朴裕河著『帝国の慰安婦』、毎日新聞・山田孝男氏との関係

2015年3月27日の安倍首相「慰安婦は人身売買犠牲者」発言は、朴裕河著『帝国の慰安婦』と、毎日新聞・山田孝男氏からの影響があるように筆者は考えます。

 

・安倍首相、主語省いたまま「慰安婦は人身売買犠牲者」(2015年 3月27日)

 

『安倍首相は27日、米ワシントン・ポスト紙のコラムニスト、デビッド・イグナチウス氏とのインタビューで「人身売買で酷いめに遭い、推し量ることもできない苦痛と言葉では言い尽くせない痛みを体験した人たちを思うと胸が痛む」と述べた。

[中略]

安倍首相はまた「歴史上多くの戦争が起こされ、そこで女性たちの人権が侵害された」と述べた。』

 

下記に、発言への影響があるとの根拠と考えられる記事を引用します。

 

・風知草:深慮の孤立=山田孝男(「帝国の慰安婦」書評)(2014年12月22日)

『19世紀末以来、欧米列強は領土、権益の拡大を競った。軍人も商人も遠国に留め置かれ、慰安婦を必要とした。貧しい家の娘が金で買われ、あっせんする業者がいた。人権が顧みられぬ時代があった。
 だから朴教授は、慰安婦を「旧日本軍(に固有)の性奴隷」と見る主張にくみしない。旧日本軍を、世界史上にまれな異常集団と見なし、無条件に弾劾する立場を取らない。
 慰安婦は、故国を遠く離れた軍事基地ではありふれた存在である。』

 

・安倍晋三の「すし仲間」朝日・曽我豪は政治部長じゃなくて編集委員(2015年 1月23日)

『毎日の山田孝男は、東電原発事故の直後に原発批判で名を売った人間だが、実はゴリゴリの右派記者で、一昨年(2013年)、あの故岩見隆夫ですら反対を表明した秘密保護法案に賛成するコラムを自紙に書いた。いかにも安倍晋三とつるみそうな人たちだと思う。』

※2013年12月16日、2014年5月15日、2014年12月16日に一緒に飲食)

 

・戦後70年談話の有識者会議、25日初会合 16人決定(2015年2月19日)

『メディアからは飯塚恵子・読売新聞アメリカ総局長、山田孝男・毎日新聞政治部特別編集委員が入った。』

 

朴裕河氏は今日のFacebook投稿で、安倍首相の発言に対して、西野瑠美子さん、小野沢あかねさんの著書『日本人「慰安婦」』の記述を取り上げて、「慰安婦」被害者支援者側の方こそ誤りを認め始めているように記してました。

 

・朴裕河氏のFacebook3月30日投稿<慰安婦問題>

『安倍首相が「慰安婦は人身売買犠牲者」と言ったことについて、"希釈的方法"、"本質を曇らせている"と非難する言論が多い。
しかし、慰安婦問題の解決に向けて中心で活動してきた日本の支援団体リーダーと研究者もこの月に出した本で、次のように語る。
慰安婦問題について、「公娼業者だけでなく民間人も多数の女性の売買と詐欺的斡旋に関係したことを知った」(260ページ)と。
そして、「戦争に出る以前から女性を人身売買や詐欺に売春に追い込む業者が実にたくさん存在しており、だから日本軍はそのような業者たちに命令して、多くの女性たちを"慰安婦"を調達することができた」と。
人身売買こそ、慰安婦たちを大量調達可能にした社会構造だったということを、やっと彼らも認め始めたようだ。』

 

朴裕河氏が「彼ら」と呼ぶ「慰安婦」被害者の支持者、研究者が運営するサイト「Fight for Justice」では、以前より「人身売買」の件については言及されておりました。

※「Fight for Justice」は2013年8月より運営。西野瑠美子さん、小野沢あかねさんの研究も反映されており、サイトで記されるずっと以前に、「人身売買」についても研究されていたと考えられます。

 

・『1-1 朝鮮では強制連行はなかったの? - Fight For Justice 』

 

『日本軍は、朝鮮・台湾で女性たちを集める時には、業者を選定し、その業者に集めさせました(軍に依頼された総督府が業者を選定する場合もあります)。この業者は、人身売買や誘拐(騙したり、甘言を用いて連行すること)を日常的に行なっていると呼ばれる人たちだったので、彼らは日本軍「慰安婦」を集める場合もしばしば同様の方法を用いました。

人身売買も被害者にとっては経済的強制ですから、強制連行と言うべきでしょう。誘拐や人身売買で連行された女性たちが軍の施設である慰安所に入れられて、軍人の性の相手をさせられたら、強制使役になります。軍の責任は極めて重大です。この単純・明白なことを安倍首相も橋下市長も見ようとしていないのです。』

 

朴裕河氏は、自身が「右翼の代弁者」ではないと主張していたはずですが、被害者を長年支えた支援者より、右翼の安倍晋三首相の認識の方がより妥当だと主張したいのでしょうか。